――電子書籍などの今後の見通しについてはいかがでしょうか。
森本:アメリカでは、出版市場全体に占める電子書籍の割合は約30%で頭打ちになっているそうです。
ただその統計資料には、AmazonのKindle Direct Publishingのデータが含まれていないと聞いています。これは推測の域を出ませんが、実際に人々はもっとデジタルで本を読んでいて、その傾向はこれからますます強まっていくのではないかと考えています。
また、国内同様に海外でも海賊版が非常に大きな問題になっています。違法に漫画を配信しているわけで許される行為ではありませんがそれらの違法サービスが集めているユーザー数を見ているとデジタルの分野に非常に大きな可能性があることは明らかです。
海賊版が実現していて我々ができていないこと、翻訳されたコンテンツのラインナップや日本と同時に現地版を公開するスピード感など、まずはこれを正規版でも同等以上に充実させることが不可欠です。
そのうえで出版社である我々の強みを活かす、例えば作家さんにご協力を頂いて制作秘話や制作過程を披露する、原作の面白さを損なうことなく読者に伝える良質な翻訳を行うなどがそれに該当すると思っています。
例えば日本語タイトルの『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のような独特の表現を、作家さんや編集者と国際ライツで徹底的に話し合ってイメージを損なうことなく現地の言葉に訳するとかですね(ちなみに英語版タイトルは“O Maidens in Your Savage Season”)。
海賊版対策と並行して読者が海賊版をいま読んでいることで得ている満足感を超える正規のサービスを提供できるようにならないといけないと思っています。