日本の漫画は、海外コンテンツ市場で「本当に」戦えているのか

講談社の中の人に聞いた
マガポケ プロフィール

国ごとのニーズを見極める

森本:グローバルトレンドというものは勿論あるんですが、国ごとにニーズや好みは結構違います。また同じ国のなかでもまたニーズが違うことはよくあります。

面白い事例として『進撃の巨人』の全世界での定価を現地通貨ベースと円ベース一覧表にしてみました。所得レベルや金銭感覚などで異なってきます。日本では税別429円で買える『進撃の巨人』の単行本が、アメリカでは約1200円もします。ベトナムでの100冊の売り上げは、ポルトガルやアメリカでは9冊を売れば達成できてしまいます。

【表を拡大する】

 

国・地域によってコミックの価格相場は全然違います。それはもちろん給与水準や物価に影響を受けています。また経済成長率や人口増加率も全然違います。とにかく世界を「海外」の一言で片付けず、同じ作品であってもそれぞれの国・地域に合わせた導入・展開プランを考えていくことが重要だと思っています。

スマホの普及とともに…

――デジタルについてはいかがでしょう。最近、スマホで見るのに適したカラーで縦読みのウェブトゥーン(韓国発のデジタルコミック)の人気が高く、アジア地域で広がっているとも耳にします。

加登:「日本漫画はクオリティが高いから、負けるはずがない」という人たちもいますが、デジタルに限ってはそうともいえない、とわたしは考えています。

ケータイ片手に読む人たちは、ライトにコミックを消費したい人たち。カラーの雰囲気を楽しみながら、でも文字が多いものは避ける。ウェブトゥーンを読むのはそういう層の人たちではないでしょうか。

森本:インドネシア、ベトナムなど物価が安いところでは書籍の値段も安いこともあり日本の出版社が現地でライセンスビジネスを拡大していくことがなかなか難しいという面はあるのかなと思います。

一方で韓国や中国はそういう国に対して、デジタルでガンガン攻めていくんですよね。それらの国の人は本屋にはあまり行きませんがスマホはたいてい持っています。ユーザーからしてみれば、スマホで手軽に楽しめる娯楽がほぼ無料で簡単に手に入るわけです。しかもカラーで見栄えがいい。

そんなわけで、ウェブトゥーンは東南アジアのみならず北米など先進国でもどんどん受け入れられ始めています。これはサムスンなどが台頭しはじめたころのテレビとか携帯電話といったエレクトロニクス業界で起こったパターンととても似ています。

東南アジアでやられているうちはまだ大丈夫といって安穏としているんですが、気がつけば日本以外の全世界を席巻される可能性はあると思いますね。だから、「日本の漫画はクオリティが高いから負けるはずがない」という考え方は非常に危険だと思っています。