東西冷戦を描いた漫画家2人が語り合う「成功した社会主義」の可能性

『東独にいた』第1・2話を無料公開
ヤングマガジン編集部 プロフィール

平成世代が見た「ベルリンの壁」

宮下さんが連載中の『東独にいた』は、冷戦下の東ドイツを描いた作品です。宮下さんは1991年生まれで、ベルリンの壁は1989年に崩壊。冷戦のことは教科書で学ぶような出来事かもしれません。もともと興味のあった題材だったのでしょうか。

宮下:いえ、実は全く知らない時代のことだったんです。デビューするまでは現代を舞台にした人間ドラマに取り組むことが多く、『東独にいた』のような歴史ものは初めてでした。根っことして二人の主人公がいるという話を描きたかったので、それなら象徴的に「壁」がある東西ドイツが良いのではないかと、一から勉強しはじめました。

『東独にいた』第1話より
 

池田:いきなり作品の核心に触れてすみません。差し支えなければお聞きしたいんですけど『東独にいた』では、史実通り壁は崩壊するんですか? それともフィクションとして異なる世界への分岐を想定していらっしゃるんですか?

宮下:僕としては「成功した社会主義」みたいなのを描いてみたくて…。歴史に “ if ” は禁物かもしれませんが、東ドイツがこういう路線を辿っていれば存続して成功してたんじゃないかみたいなのも描いてみたいと思っています。

たとえば、中国は成功に近い社会主義だと思うんですけど、ちょっと違ったタイプの「成功した社会主義」っていうものを描けるなら描きたいですね。理想の社会主義国家の実現のためにはどのようなやり方があるか、という当時の議論の資料を探しているんですがなかなか見つからなくて。

池田:物語としては、何をもって成功したかという事ですよね。東ドイツが国境を解放したけれども存続していれば成功なのかとか。労働力が皆逃げちゃうから壁を作っていたわけなので。