芽生えた政治への関心

これまで政治には興味がなかった。
 
子どもを授かるまでは投票にすら行かなかった。親になり、社会人の自覚ができてようやく選挙に行くようになったが、あまりよく考えずに話題の候補者に入れたり、現職候補に入れたりしていた。
 
山本氏の演説に触発されてスマホでネット検索するうち、自分の生活苦を「政治」で変えられるかもしれないことが、ようやく分かってきた
 
たとえば公営住宅に入居しやすくなれば、5万円の家賃を払って民間のアパートを借りる必要はなくなる。最低賃金が1500円になれば、クレジットカードで借金する生活から抜け出せる。娘の洋服だけでなく、自分の上着も買い 替えられるかもしれない。今は年1回しか娘を遊園地に連れていけないが、年2回に増やせるかもしれない……。
 
消費増税は本当に苦しい。「生きているだけでお金をとられる。死ねってこと?」と思ってきた。政治が変わればこの増税も防げるかもしれない。

 
歯がゆいのは、まわりの人たちがあまりに無関心なことだ。

「最近は職場でよく政治の話をしますが、みんなピンときてくれません。みんな、生活は苦しいんです。それなのに『変えよう』という動きになりません。年金が信用できなくて悔しいはずなのに、『みんなで我慢しようよ』という雰囲気になってしまう。これは、もっと身近な問題でも同じなんです。うちの会社は有給休暇がほとんどもらえません。でも、『どの会社でも同じよ』となってしまう。方向が違うと思うんです。我慢していたら削られるだけ。つぶされてしまってはいけないと思うんですけど……」
 
長岡さんはそう語り、テーブルの上で組んだ両手に視線を落とした。

Photo by iSotck

長岡さんを取材していて、何度ため息が出たか分からない。本当に切羽詰まった状況の中で暮らしている。孤立無援である。彼女は自分のことを「アダルトチルドレン」という。父親が抑圧的な人で、「娘は親の言うことを聞きなさい」と、言われ続けてきたそうだ。母はそんな父に意見を言えず、心身を病んでしまったという。どんなにつらくても実家を頼れない事情があるのだろう。
 
暮らし向きについて話しているとき、着ていたカーディガンの袖をわたしに見せてくれた。白いニットの袖は、糸がほつれ、薄汚れた灰色だった。10 年近く買い替えていないのだそうだ。自分は話を聞くだけで、なんの助けにもなってあげられない。せいぜい本当に困ったときの相談先を紹介することくらいしかできない。歯がゆかった。
 
山本氏の演説で一番心に残っている言葉は?
 
そう聞くと、長岡さんは「生きててくれよ !  死にたくなるような世の中やめたいんですよ ! 」だと答えてくれた。誰かに「生きててくれ」と声をかけられないと、死んでしまいそうな人がいる。それが、今の日本の現実だ。

貧困層だけではない。れいわ新選組に投票したのはどのような人たちなのか。そしてその背景はなにか。山本太郎の力と危うさとはなにか。多くの人の声をリアルにきき、エビデンスも含めて熱く冷静に分析した一冊。