「負の性欲」はなぜバズったのか? そのヤバすぎる「本当の意味」

男女の「生殖戦略」の違いが示すこと
御田寺 圭 プロフィール

だがいま、お見合い結婚は激減し、人びとは「新自由主義的」なパートナーシップ市場で「よりよい相手」を巡って際限のないえり好みを続けている。厳選すれば厳選するほどに、よりよい相手と巡り合える可能性が高まるのだ。つまり「負の性欲」の効用が最大化される時代である。

スマートフォンを起動し、マッチングアプリ、デーティングアプリを眺めて、より高い収入と学歴と身長をもつ、よりイケメンでより「ハイスぺ」なパートナーとの将来を望みながら、ツイッター上では「キモい男」の性欲を叩く──それらの行動はすべて、連続したひとつの物語の上にある。

 

問題は、負の性欲の「暴走」

留意しておかなければならないが、男性の性欲が概して「交渉権の行使」であるからといって、男性が「拒否権の行使」をしないというわけではない。反対にも同じことがいえる。女性の性欲が概して「拒否権の行使」であることは、「交渉権の行使」をしないことを含意しない。

雑誌の「抱かれたい男ランキング」などにズラリとならぶ男性俳優やアイドルに、女性たちが黄色い声を上げるのはまさに「交渉権の行使」と言えるし、「35歳過ぎた女は無理だわw」などという男の言動は、まさに「拒否権の行使」そのものであろう。

実際にアプローチをかけてきた男性や、仕事や日々の生活で相対する男性に対し、女性が拒否の意思を示すこと自体はもちろん批判されるべきものではない。

「負の性欲」が特に女性に対する批判として扱われるのは、(1)自分の「生理的嫌悪感」にすぎないものを、社会的にもっともらしいワード(「性加害」「ハラスメント」など)によって根拠づけたり、(2)見ず知らずの男性の私的領域にまで踏み込んで「キモい(あなたの言動でキモいと感じさせられた私は被害者で、お前は加害者だ)!」と言い募ったりするような場合においてである。

「自分に接近し、性的にアプローチしてきた男性を拒否(厳選)する」という枠を超えて、特にSNS上では「自分に向けられているわけでもない、無関係な他人の性欲を発見したさいに、まるで自分のことのように被害者意識を持ち、これを断罪しようとする過剰反応」が頻繁に起きている。それこそが、「負の性欲」が問題化される局面である。

先日SNSユーザーたちが、ネットの片隅で「10代20代と結婚したい」と望み活動する40代男性に対して、「キモい」「加害者」という非難のニュアンスを多分に含んだコメントスクラムを炸裂させたことは、自他の境界を見失わせる「負の性欲」の暴走を如実に示す実例だったといえるだろう。*3

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