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丹羽宇一郎氏が語る、一流経営者の「退き際の美学」

年寄り社長は早く辞めるべし!
伊藤忠商事社長時代にバブル期の負債4000億円を一括計上するという荒療治を成功させ、業績を黒字に戻した丹羽宇一郎氏。最新刊『社長って何だ!』から、彼の経営者としての矜持に迫りました。社長になる方法を説いた書籍は数あれど、「社長の辞め方」ってご存知ですか?

なぜ6年で社長を辞めたのか?

私は社長就任時、任期を6年にすると社内外に公言しました。つまり6年後にすっぱり社長の座を退くということです。

なぜ6年かと言えば、経営再建にはそれくらいの期間が必要であること、そしてそれに伴う私の情熱が続くのもやはりそれぐらいだろうと判断したからです。

私の経験から言って、6年以上かけなければできないようなプロジェクトはほとんどありません。6年間トップを務めた社長が、「まだやり残したことがある」と任期延長の理由を語る場面をときどき目にします。

バカを言っちゃいけません。「やり残したことがある」ということは、「6年かかってもできなかった」ということです。そんな役立たずの社長に会社の将来を預けられますか。

社長が引退しても会社はうまくいく

私が自分の任期を公言したのは、自分に対する戒めでもありました。6年も社長を続ければ、知恵も経験も自信も付いてきます。見え透いた甘言には嫌悪感を覚えても、一度甘い味を経験したら「今、辞めてもらっては困ります」というお世辞を本気にして、権力の座にしがみついてしまうかもしれません。

ならば先に引き際を決めて宣言してしまおうと考えたわけです。内外に宣言した以上は、いやでも守らなければならなくなります。

長く続けることが力のある証拠だと思っておられる社長も数多く目にしますが、百害あって一利なしでしょう。むしろトップにいる期間は、一定期間を超えれば短ければ短いほどいい、というのが私の持論です。

社長、あなたがいなくても、世の中はちゃんと回っていくものです。過去、大企業の社長が替わったために会社が潰れたという事例を私は寡聞にして知りません。

長く続けるほど経営は停滞し、前に進みません。さらにトップの権力が強くなり過ぎて、後続世代が前任者の後を追うばかりになり、やがて行き詰まります。権力は年月とともに必ず腐敗します。トップは経営の道筋をできるだけ早くつけて次世代に渡すことです。

「老害」経営者が日本企業をダメにする?

ところが、日本の企業では社長の高齢化が止まらないのが現状です。

東京商工リサーチによると、2018年の全国社長の平均年齢は61.73歳に達し、前年より0.28歳上昇しました。団塊世代の社長交代が進まず、高齢化が顕著です。年齢分布を見ると、60代の構成比が30.35%で最も高く、70代以上は28.13%と調査を始めて以来、最高を記録しています。

帝国データバンクの調査でも同様の傾向を示しており、1990年の調査開始以来、社長の平均年齢は上昇し続け、59.7歳で過去最高を更新しました(2019年1月)。