営業マンの職を奪う「不気味な職業」の台頭に気づいていますか

ある資本家からの問いかけ③

登場した謎の職業

時代時代によって社会で求められる仕事は変わる。それが如実に分かるのが、5年ごとに行われる国勢調査の職業別就業者数のデータだ。就業者数が増えていれば、その仕事は社会に求められていることになり、減っているなら、その仕事の社会的役割は終わりつつあることを意味する。

こうした世相は職業の分類にも現れる。社会に求められ生まれた新しい仕事が、新たな職業分類として登場してくるのだ。

これまで私は「営業マンの絶滅危機」について述べてきたが、それは各種の統計にも表れている。

統計データ分析家の本川裕氏は、『なぜ、男性は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)などで、近年の職業分類の変化について詳細に分析し、その結果をまとめている。本川氏の分析を参考にしながら、「営業マンの絶滅危機」をデータの面から見ていきたい(プレジデントオンラインの記事『この15年で130万人の営業マンが消滅したワケ』なども参照している)。

戦後まもない1950年代、就業者数の増加率でもっとも大きかったのが「電気機械器具組立・修理従業者」だ。工業製品の輸出で国を立て直そうとした当時が伺える。

日本が大きく経済的に成長した高度経済成長期の60年代は、工業化の進展とそれに伴う企業の増加を受けて、「輸送ドライバー」や「管理職」が増加率のトップになった。また、85年調査の増加率1位は「技術者」で、当時の日本のハイテク産業の発展ぶりを示している。

その後、90年から2015年調査までは、ケアマネージャーや保育士、ホームヘルパーなどの社会福祉関係の従事者の増加率が一貫してトップとなっている。

2000年調査では、ホームヘルパーなどが「家庭生活支援サービス職業従事者」として項目だてられ、2010年調査では、介護職員やホームヘルパーが分離されて、「介護サービス職業従事者」という新たな職業分類となった。

ここで注目してほしいのが、2010年の調査で、「介護サービス職業従事者」とともに新しい職業分類として登場した「営業・販売事務従事者」である。

【PHOTO】iStock

この仕事は一見すると、この記事の言う「営業」に関連する仕事のように見えるし、関係ないようにも見える。私は当初、この仕事は、ネット販売の対応の仕事だろうと思った。ネット販売が広く普及し始めた時期でもあるから、その種の仕事が増え、それらが「営業・販売事務従事者」として新たに登場したのだろうと思い込んでいた。

2015年の調査では、この「営業・販売事務従事者」はさらに増加し、69万人となる。2010年調査より23.5%の増加であり、増加率は「社会福祉専門職従事者」に次ぐ2位だった。この仕事が社会に求められ増えつつあるということだ。

そしてこのとき、私は自分の認識が誤っていたことに気づく。この仕事はネット販売の対応ではなかったのだ。

では、この「営業・販売事務従事者」とはどんな仕事なのか、その種明かしをする前に、この記事の主役である、営業マンの数の変遷について見ておこう。

 

営業マンは衰退の一途を辿る

営業マンは、国勢調査の職業分類では「販売従事者」の中の一分類である「営業職業従事者」として分類される。なかには、医薬品、機械器具、通信・システム、金融・保険、不動産、食料品、化学品、その他のあらゆる産業で営業を担う営業マンたちが含まれる。

営業マンの数は日本経済の成長に合わせて増えていった。なかでも1980年代の伸びは大きく、10年間で230万人から74%増の400万人まで増加した。この傾向はしばらく続き、バブル経済崩壊後の2000年調査では468万人というピークに達する。

その後は一転して減少傾向となり、2010年調査では400万人を割り込む。さらに2015年調査では10.8%減少して336万人と、1980年代レベルにまで落ち込んだ。2000年のピーク時と比べると、この15年で132万人の営業マンが消えたことになる(繰り返しになるが、これについてはプレジデントオンラインの本川裕氏の記事を参照している)。

営業マンの大きな減少は、平成時代の不況の影響や団塊の世代の退職など、さまざまな要因が絡んでいるだろうが、私は日本の経済構造が変化し、徐々に営業マンを必要としない経済に変わりつつあることも一因だと考えている。それをデータで示すのが、先ほどの「営業・販売事務従事者」の増加傾向なのだ。

では、種明かしをしよう。統計局の職業分類によると、「営業・販売事務従事者」とは、「事務従事者」の一分類であり、定義には「経営方針などに従い営業・販売に関する事務の仕事に従事するものをいう」とある。そして「商品を直接売買したり、直接営業活動を行うもの」とは別の分類であるとされている。

具体的には「営業事務員、販売事務員、株式販売事務員、銀行貸付係事務員、営業管理事務員」などとなっており、電話やネットなどによる「通信販売受付事務員」は「含まれない」とされている。

つまり営業・販売事務従事者には、私が当初考えていたネット販売の対応は含まれていないということだ。そして、この職業分類の仕事というのは、事務職でありながら、営業方針に従って、株や銀行貸付、商品やサービスの営業や販売を行うものである。かつ、いわゆる営業である営業職業従事者とは別の仕事だ。

この仕事について、統計データ分析家の本川裕氏は、

「パソコンやウェブ(中略)などによるネットを通じた顧客との情報のやり取りで、ある意味『事務的に』販売業務を消化していくパターンへとシフトが起こっている(以下略)」

と述べている。その考えに私も同意した上で、もうひとつ付け加えたい。それは、この仕事はいわゆる「インサイドセールス」ではないか、ということだ。

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