ついに市へ賠償請求も…「武蔵小杉のタワマン」の価値はどうなるのか

行政の過失か、自己責任か
大原 みはる プロフィール

「行政の責任」をどこまで問えるか

さて、ここで話を一戸建ての浸水被害に戻そう。ひとたび被害に遭ってしまうと徹底的に救いがないからこそ、行政にはしっかりと浸水対策をやってもらいたいのが人情ではある。しかしその一方で、もはや行政による災害対策が当てにできない「自己防衛の時代」に入った、という冷静な認識が必要になっていることは前回述べたとおりだ。

そもそも現代は、人々に居住・移転の自由が認められており、ハザードマップも公表されている。ひとたび大雨が降ったとき、浸水するリスクを承知でそこに住み続けているのは、ある面で自己責任でもあることは忘れてはいけない。

12月5日、武蔵小杉の被災住民が川崎市に、第三者委員会による被害の検証と賠償を求める要望書を出した、と報じられた。しかし、上記のような要因をあわせて考えると、たとえ今回の件で行政相手に裁判を起こしても、賠償を勝ち取ることは難しいと思われる。

 

だから、絶対に水害に遭いたくないと考えるなら、被災の恐れの少ない場所へ引っ越すか、建替え時に土壌をかさ上げしたり、1階をピロティ方式の車庫にするなどして、水害が起きても自宅の被害が最小限で済むように自分で対策をしていくことが、最も現実的かつ前向きではないだろうか。

武蔵小杉の未来

さて、本稿の最後に、読者が一番関心を持っているであろう武蔵小杉エリアの資産価値についてふれたい。

今回、武蔵小杉という街の脆弱な部分と、住民が苦労する様子が全国に伝わってしまったことで、近い将来同エリアに移り住もうと漠然と考えていた人が「あんな町に住むのはやめよう」と考えを改めるのも、自然なことかもしれない。

その意味で、当地の居住物件に対する需要が、潜在的なものを含めて一時的には沈静化することは容易に想像がつく。今回断水・停電被害を免れた近隣の集合住宅や一戸建ての住人からすると、うちは被害に遭っていないのだから、風評被害はまっぴらごめんだという気持ちだろうが、世間はそうは動いてくれないだろう。