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33歳でがん…「死ぬ前に、何が食べたい」と聞かれたらどう答えるか

おやつで「理想の死に方」を考える

『食堂かたつむり』や『つるかめ助産院』など、数々のベストセラー小説を生み出す作家の小川糸さん。これまで生と死をテーマに小説を描きつづけるなか、近年、自身の母親が余命宣告され、ショックを受ける様子を間近に、改めて「死」を考えたといいます。

新著の『ライオンのおやつ』ではホスピスで生活する33歳の女性が、自分の死と向き合うシリアスなストーリー。死という難しいテーマを軸に綴った小川さんに、本書の読みどころやご自身の死生観を語っていただきました。

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「死ぬのが怖い」と母は言った

―新著の『ライオンのおやつ』は、33歳で癌と闘う海野雫が主人公です。

余命宣告を受けた彼女が、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」に向かうシーンから物語が始まります。童話的な設定に見えて内容はとてもシリアス。「死」がテーマです。

私の作品は、「生と死」に関わりのあるものが多いんです。『食堂かたつむり』にも大切な人の死が登場しますし、『つるかめ助産院』では生命が産まれる場所を書きました。その、つるかめ助産院と対になるような「命を終える場所」の物語、真正面から死を描いた作品を書きたい気持ちを持ち続けてきました。

直接のきっかけは、私の母に癌が見つかって余命宣告を受けたことです。その際に母が「死ぬのが怖い」と言ったんですね。意外でした。

 

私自身は自分が死ぬことの恐怖を考えたことがなかったからです。「そういうものなのか」と思い、「多くの人は同じように死を得体の知れない恐怖と捉えているのかもしれない」と気づきました。

読んだ人が自分が死ぬことが少しでも怖くなくなるような物語を書きたい、という思いを強くしました。

もちろん私も、大切な人を亡くす哀しみや死への怖れは持ち合わせています。一方で、死ぬことも生きることと同じく、日常と地続きではないかとも思うんです。

今は病院で亡くなる方も多いですし、死はなかなか目に触れないですが、本来は暮らしの中にあるものだと感じています。見えないからこそ、怖さが増すのかもしれません。雫という若い女性の死への過程を、理想の場所を舞台にして描くことにしたきっかけはそこにもあります。