テスラの成功が示した「営業マンはもういらない」の残酷な現実

ある資本家からの問いかけ②
三戸 政和 プロフィール

なぜテスラは勝てるのか①

自動車業界の大変革のひとつがEVシフトだ。地球温暖化、化石燃料の枯渇という問題に直面し、自動車メーカーでは長らく、ガソリン車に変わる次世代の車を模索し続けてきた。ディーゼル、ハイブリッド、電気自動車、燃料電池車など研究対象はさまざまだったが、どうやらその争いには決着がついたようだ。勝ったのはEVだ。
 
世界では温暖化対策が急務だ。いまは企業単位で二酸化炭素の排出規制をする方法が主流で、その数値の厳しさはどんどん増している。自動車メーカーにとっては、その数値をクリアするには、二酸化炭素を排出しない車(ゼロエミッションビークル=ZEV)の生産割合を上げなくてはならないレベルまで来ている。

中国やアメリカの一部の州などは、販売する車の一定割合はZEVにするよう義務付けている。とくにアメリカではハイブリット車がZEVから外され、日本メーカーにとっては大きな問題になっている。さらに、ヨーロッパの一部ではガソリン車などの内燃機関搭載の車の販売禁止までが現実になりつつある。

世界最大の自動車市場、中国も国を挙げてEVに力を入れ、新興メーカーがEV開発を競っている。ハイブリッドの成功が足枷になっていた日本メーカーもその重い腰を上げたようだ。

要するに、世界の自動車メーカーはようやくテスラの後を追うことを決めたわけだ。しかしそのテスラはというと、すでに普及帯モデルを売り出し、量産体制に入っている。EVにおいては、テスラが圧倒的に有利だということはだれもが認めるところだろう。

もちろんテスラの生産や供給体制には不安がある。テスラのアドバンテージは、モデル3が安定的に供給され、売れることに掛かっている。だが、それでも私はテスラが優位だと考えている。

その理由は2つだ。ひとつは、テスラのEVに対する市場や専門家の評価が高く、何より、ユーザーの評価が高いこと。テスラのEVにほかのメーカーが追いつくには、まだまだ時間が掛かるだろう。

さらに、もうひとつの理由が決定的だ。その理由とは何か――。テスラが作っているのは、単なるEVではない、というものだ。

なぜテスラは勝てるのか②

テスラが作っているのは、単なるEVではない。それは、普及帯のモデル3を実際に見てみれば、多くの人が感じることだと思う。テスラが作っているのは、いわば「車輪の付いたスマホ」なのだ。

モデル3の運転席は極めてシンプルだ。ハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバー、ウィンカーという必要最低限の操作機器に加えて、15インチのタブレットがあるだけだ。車内で一際目立つこのタブレットを通じて、車の操作のほとんどは行われる。テスラのEVにとって、このタブレットがすべてだ。

タブレットの中にあるソフトウェアが、EVのすべてを制御し、ソフトウェア次第で、テスラのEVはスポーツカーにもなるし、ファミリーカーにもなるし、単なる移動のための箱にもなり得る。要するにスマホと同じなのだ。いずれ、タブレット以外のハンドルなどの操作機器はなくなるだろう。

当然ながら、ソフトウェアは通信によって、常に最新のシステムにアップデートされる。不具合が見つかれば、すぐに改良される。テスラのEVは、車でありながら、ソフトウェアが更新されるたびにどんどん新しくなるのだ。

実際、ソフトウェアのバージョン10では、「テスラシアター」や「カラオケ」、「ゲーム」などの機能が追加された。これらの機能は、いまはまだ、充電待ちなどの停車中に楽しむためのものとされているが、いずれは移動しながら、NetflixやYouTube、カラオケを楽しめるようになるだろう。

また、同時に追加された「スマートサモン」という機能では、駐車場の中で、車を自動で動かして、自分のいる場所に呼び寄せることができるようになった。完全自動運転に一歩近付いたわけだ。テスラのEVはすでに車を脱皮しつつあると言える。