営業マンが「絶滅危惧種」になっていることに気づいていますか

ある資本家からの問いかけ①
三戸 政和 プロフィール

営業はさまざまな不幸をもたらす

ここで私たちは、昨今の新聞紙面を賑わせた、ある企業のことを思い浮かべないだろうか。生命保険を不適切に販売した郵便局、不正融資によって業績を上げていたスルガ銀行など、いくつもの企業が、私たちの社会に不利益をまき散らしている。それらはすべて「過度な営業」の副産物として生じたものだ。

「釣り堀に魚が10匹いないのに、10匹とってこいといわれる状況」

これはスルガ銀行の不正融資問題の調査報告書に出てくる言葉だ。

スルガ銀行の不正融資問題とは、シェアハウスなどの投資用不動産融資に対して、スルガ銀行が多大な不正融資を行っていたという問題だ。その不正融資の額は1兆円にも上るという。

スルガ銀行の行員は、不動産業者と協力しながら、通帳を改ざんし、収入や貯金額を偽って、本来は融資を受けられない人に融資をしたり、不動産の価値を示すレントロールという数字を偽って、過大な融資をさせたりといった不正を行っていた。

不正な融資を受けた人たちの多くは、シェアハウスなどの投資した不動産から、思うような利益が得られなかったり、過大な借金に苦しめられたりという状況に陥っている。

 

スルガ銀行はかつて、金融庁から「地銀の優等生」とまで持ち上げられ、市場でも高く評価される銀行だった。それらの評価の根拠となっていたのが、投資用不動産向けの融資に力を入れるという独自の戦略だった。そこが不正にまみれていたわけだ。つまり金融庁も市場も、偽りの好業績に騙されていたということになる。

何より驚くべきは、この不正にかなりの数の行員たちが関わっていたことだ。なぜ、彼らはそんな不正に手を染めることになったのか。

それを示すのが、この章冒頭の言葉だ。この問題の背景にあるのも過酷な営業ノルマだった。第三者委員会による調査結果では、多くの行員から、その過酷さについての証言が得られている。少し拾ってみよう。

「過度な営業目標があり、目標は必達であり、達成出来ていない社員には恫喝してもよいという文化があります」
「数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた」
「数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた」

不正融資を受けた側の苦しみも「公害」だが、不正融資をせざるを得ないところまで追い詰められた行員たちのこの状況も「公害」ではないだろうか。

なぜ営業は、こんな「公害」を生みだすのだろうか――。すでに触れているが、それは戦略の描き方に失敗しているからである。

つまり、郵便局はかんぽ生命の保険販売による手数料収入に頼りすぎ、スルガ銀行は投資用不動産融資からの利益に頼りすぎた。頼りすぎるがゆえにその目標が過大となり、従業員たちへのノルマも過大になっていったということだ。

いまだに、飛び込み営業やテレアポに頼らざるを得ない企業も同じだ。彼らにはそもそも営業戦略がないか、少なくとも営業戦略が十分なものではないからこそ、古典的で単純な飛び込み営業やテレアポに頼らざるを得ない。しかし、彼らに本当に必要なのは、少ない資源で大きな利益を生み出す「適切な営業戦略」を作る能力なのだ。

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では、その逆である理想的な営業戦略をとれば、営業とはどんなものになるのだろうか。次の章では「理想的な営業戦略」をとっている、ある企業の話をしよう。

紹介するのは、イーロン・マスク率いる電気自動車のテスラだ。

(明日公開の第二回に続く。著者へのメッセージ、質問は、著者のツイッターまで→@310JPN)