日本が「AIの波」に乗り遅れた残念な理由とは?

誰も無関係では生きられない時代
松原仁

国家主導で「何でもアリ」の中国

中国は監視カメラを全国に張り巡らせている。アメリカ、EU、日本などでは個人情報保護の観点から本人の許可を得ていない画像データの利用は困難であるが、中国では大量の画像データを用いた研究が盛んに行われてその分野でトップクラスになっている。また個人の活動状況をAIが分析してその人の信用度を点数化するという試みも中国で活発に進められている。

たとえば横断歩道で赤信号を無視して歩くとAIがそれを検知してその人の信用度の点数を下げるのである。その信用度はすでにクレジットカードを発行するかどうかや、自社に採用するにふさわしい人材かどうかなどのチェックに実際に使われ始めている。個人情報の取り扱いについては日本の常識からはかけ離れているが、中国が大量の個人情報のデータを処理してその分野での研究を進歩させているのは事実である。

EUはAIそのものの研究からすればアメリカや中国からは遅れているものの、個人情報の取り扱いについては世界でも先進的でリーダーシップを取って進めつつある。

 

誰もがAIと無関係に生きられない時代

そんな中で日本の位置づけは厳しい。残念ではあるが、AI分野での日本の国際的な地位が低下しているという現実を受け入れなければならない(先述のIJCAIでも日本からの発表の割合はとても小さい)。

私は公立はこだて未来大学で、基礎的な方面としてはAIに小説を書かせる(目標は星新一である)などという研究を、応用的な方面では公共交通をAIで効率化する(ベンチャー会社も立ち上げている)などの研究を進めている。

かつてのAIは研究者だけのもので社会とはほとんど関係がなかったが、いまのAIは社会と深く関係している。AIと無関係で生きられる人はいないとすらいえる。だからこそ、正しい情報をもとに世界情勢を把握してほしい。そして日本のおかれている現状を認識した上で日本がAIで一定の地位を確保するにはどうすればいいのかを私たち一人ひとりが考えていかなければならないのだ。