日本が「AIの波」に乗り遅れた残念な理由とは?

誰も無関係では生きられない時代
松原仁

消えていったエキスパートシステム

1950年代後半から1960年代が1回目のAIブームである(このブームは日本には到達せず、その舞台は、もっぱらアメリカとヨーロッパであった)。しかし当時のコンピュータの性能はとても貧弱で、いまの視点からするととても知的なことができるはずはなかった。1960年代半ばになって期待外れということでAIは(1回目の)冬の時代を迎えた。

1970年代の前半に「エキスパートシステム」というものが作られた。これは人間の専門家の代わりを務めることを目指したAIである。たとえばマイシンというエキスパートシステムは、ある内科系の病気の患者のデータを入力するとその患者がどの病気でどの薬が効くかをかなりの精度で出力することができた。

「これが実用化できればすばらしい!」ということで、他の病気だけでなく法律、製造業、金融などさまざまな領域のエキスパートシステムが世界中で作られるようになった。

 
photo by THEPALMER

エキスパートシステムとは、簡単に言えば人間の専門家にインタビューをして知識を取り出し、それを整理してコンピュータに載せるというものだ。この方法だと人間が意識して使っている知識は取り出せても、無意識に使っている知識(常識など)は取り出せない。

専門家は意図せずにさまざまな知識を使って問題を解いているが、エキスパートシステムにはそういう知識がないために、ときどきとんでもない間違いを犯してしまったのである。人間の代わりを務めることは到底できなかったという結果である。