アラサー女子の挑戦を描いたドラマ『凪のお暇』『わた定』の見事さ

2019年のテレビ界を振り返る(1)
碓井 広義 プロフィール

「お暇いただきます」という好手

「空気を読む」ことに疲れた凪は、見る側の周りにもいそうだし、もしくは自分のことかもしれないと思える「普通の女性」だった。

そんな凪が挑戦したのが「人生のリセット」だ。ふと「これまでとは違う人生にチャレンジしてみたい」と思うことは、私も含め、誰にでもある。しかし、そう簡単に出来るものではない。このドラマには、そのヒントが散りばめられていた。

人がストレスを感じる、その「大元」は、なんといっても人間関係が大きい。このドラマの主人公は、そこから逃げるのではなく、「お暇」という形をとったところが秀逸だった。

 

抱えている課題や問題は一旦脇に置き、それまでの自分、それまでの対人関係などと、時間的・空間的な距離をとってみる。そんな「自分を見つめ直すプロセス」を設定していったからだ。

とはいえ、人はすぐには変われないし、主人公もすぐには変われなかった。しかし、本来の自分、素の自分というものに「気づくこと」、「気づけたこと」が大きかったのだ。

気づくことで、少しずつ主人公が変わり、周りも(あの慎二やゴンさえも)変わっていった。

このドラマは、ごく普通の女性を主人公とした「挫折と再生の物語」だった。挫折と再生と聞けば、一般的には、どこか重くて暗いドラマをイメージする。しかし『凪のお暇』は、それをユーモアも交えて明るく、そして日常的な物語として描いて見事だった。