アラサー女子の挑戦を描いたドラマ『凪のお暇』『わた定』の見事さ

2019年のテレビ界を振り返る(1)
碓井 広義 プロフィール

郊外のオンボロアパートの6畳1間に引っ越した凪。仕事なし、家財道具なし、恋人なし。貯金もないが、自由と時間だけは手に入れた。

また環境が変われば、新たな出会いも生まれる。隣の部屋に住むゴン(中村倫也)だ。イベントオーガナイザーだという、やや正体不明の男だったが、我聞のように凪の内面に土足で侵入したりしない。

ゴンと話していると、凪の心はふわっと軽くなった。その象徴的シーンが、公園の原っぱに2人で寝転んで、ボーっと空を見上げたりする時間だ。

我聞との間では出来なかった、「素のままの自分」でいられる凪。何しろ、凪のアフロヘアというか、モシャモシャヘアは天然だが、「ストレートのさらさら髪」が好きな我聞に合わせて、毎朝、真っすぐに加工していたのだから。

このゴンだが、コナリミサトの原作漫画では、長髪の真ん中分け、あごの下に微かな無精ひげ、そして結構ハキハキとモノを言う。中村倫也が演じていたゴンとは、ちょっと違うタイプだ。

しかし、ドラマとしては、「中村ゴン」はドンピシャだった。あの中性的ともいえる佇まいや物腰、ゆったりまったりしたしゃべり方も、これしかないという「ゴンワールド」を構築していた。

ゴンは女性にモテる。だがそれは、自分が「空っぽの器」みたいなものだったからだ。誰がその器に入ってこようと、本当の自分は何も影響されない。来る者は拒まず、去る者は追わない。

 

ところが、そんなゴンが、本気で凪を好きになっている自分に気づく。そして、驚く。いわば、「遅ればせの初恋」だった。

一方の我聞だが、別れた後も、凪のアパートに押しかけたりして困らせる。最初は、「自分のモノ」であり、「言いなり」だったはずの凪が自分から離れたことに戸惑い、未練や執着から付きまとっているように見えた。

だが本当は、本気で凪を思っていたにもかかわらず、本心を隠して「空気を読む」ことばかりしているうちに、自分の本心を素直に伝えることができなくなっていたのだ。

凪、ゴン、我聞の「奇妙な三角関係」の行方は、最終回まで見る側をやきもきさせたが、最後に凪が選んだのは、「自分一人で歩き出す」だった。