アラサー女子の挑戦を描いたドラマ『凪のお暇』『わた定』の見事さ

2019年のテレビ界を振り返る(1)
碓井 広義 プロフィール

自分のために会社はある!

このドラマの中で、クライアントのスポーツ関連会社が登場した。「根性さえあれば、身体はついてくる!」と主張する男(大澄賢也)が現場を仕切っており、「パワハラ上等!」的な働き方をゴリ押ししている。

結衣のセクションに派遣で来ていたデザイナー、桜宮彩奈(清水くるみ)に対しても、立場を利用してのセクハラ三昧だった。

ただし桜宮の側にも、「デザインより人付き合いで仕事をとる」傾向があったのも事実なのだ。こうした「働く現場」の重層的な描き方が、このドラマのリアリティーを支えていた。

結衣は相手がクライアントであっても、してはならない行為に対しては抗議し、仲間であっても間違っていればやんわりと正していく。だが、彼女は決してスーパーウーマンではない。あくまでも普通の働く女性であり、「人としての常識」が武器だ。

 

近年、政府が主導する「働き方改革」に背中を押され、企業は主に「制度」をいじってきた。しかし、人が変わらなければ、働き方など変わらない。

当初は冷ややかに見ていた周囲の人たちも、物語の進行と共に徐々に変化していく。仕事は大事だし真剣に取り組むが、健康を害したり、ましてや命を落とすなど、私生活を完全に犠牲にしていいわけではないという、結衣の主張と実践の影響だ。

最終回、結衣は部下たちに、こう言った。

「会社のために自分があるんじゃない! 自分のために会社はある!」

世代や環境によって異論があるかもしれないが、これは本来、当たり前のことなのだ。しかし、その当たり前のことが当たり前であるためには、組織も、個人も、まだまだ変わっていかなくてはならないのが、この国の現状なのだろう。

このドラマは、「働き方」を考えることは、すなわち自分の「生き方」を見直すことでもあることを、重すぎず軽すぎないストーリーと、魅力的な人物像によって伝えた、出色の一本だった。