『凪のお暇』主演の黒木華〔PHOTO〕gettyimages

アラサー女子の挑戦を描いたドラマ『凪のお暇』『わた定』の見事さ

2019年のテレビ界を振り返る(1)

師走に入ったこともあり、「2019年のテレビ界」を振り返ってみたい。今回はドラマで、4月クールから吉高由里子主演『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)、7月クールから黒木華主演『凪のお暇(なぎのおいとま)』(同)を取り上げる。

「働き方と生き方を選ぶ」という挑戦

4月クールに放送された『わたし、定時で帰ります。』は、当初、よくある「お仕事ドラマ」かと思えたが、実は仕事と生き方の関係を描く、堂々の「社会派エンタテインメント」だった。

『わたし、定時で帰ります。』公式サイトより

ヒロインである32歳の東山結衣(吉高由里子)が勤務していたのは、企業のウェブサイトやアプリを制作する会社だ。

彼女は入社して10年になるが、残業をせず、必ず定時に帰ることをポリシーとしていた。仕事中毒の父親を見て育ったことや、かつての恋人で現在の上司でもある、種田晃太郎(向井理)が過労で倒れた時の恐怖が忘れられないのだ。

自分や、大切な人がそうならないためにも、結衣は「仕事の時間」と「自分の時間」の間に、きちんとラインを引く。退社後は行きつけの中国料理店「上海飯店」(店主の江口のりこ、好演)に直行して、割引券を使ってビールを飲むのが無上の楽しみだ。

とはいえ、定時に退社するために、結衣は独自の工夫をしながら、実に効率よく仕事をこなしている。また、それが自分に合ったペースでもあるのだ。このあたり、組織内における「個人主義」の通し方として、かなり興味深かった。

 

当然、周囲との軋轢(あつれき)はある。たとえば、部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)は、結衣の「働き方」に皮肉を言い続けていた。

しかも部下の性格やタイプは無視して、「もっと向上心!」とか、「高い志、持ってやれよ!」などと自分の価値観を押し付けてくる。

さらにトラブルが発生すれば、「穏便にね」と得意の責任逃れだ。結衣は、こういう上司に正面からぶつかるのではなく、まず自分たちの「できること」と「できないこと」を明確にした上で、責任がもてる「打開策」と「着地点」を探そうとするのだ。