中国、AI(人工知能)大国化するウラで「新・階級社会」が始まった

プライバシーとお得、どっちを取る?
オラフ・グロス, マーク・ニッツバーグ

浙江省のある地域プログラムは、「近所の人が社会的なルールを破ったら、通報しよう!」と呼びかけていた。「安全な浙江」というこのプログラムでは、交通違反から家庭不和に至るまでどんなことでも通報すれば、高級コーヒー店での割引などの報酬をもらえた。

2016年8月にスタートし、翌年末には約500万人のユーザーを集めたが、「隣人から監視されるなんてイヤだ」「通報の仕返しが恐い」というほとんどの住民から、猛烈な抵抗を受けた。当局の一部からも「地域をダメにするのでは」と心配し、ためらう声が聞かれた。

初期の取り組みの中には時折抵抗を受けるものもあったが、中国政府の社会信用システム構築への動きは、2018年も衰えることなく続いた。欧米の大手メディアはこのシステムを国民、とくに少数民族―たとえば、中国北西部の新疆(しんきょう)ウイグル自治区の主にイスラム教徒から成るトルコ系住民「ウイグル族」―を監視・支配する手段だと報じていた。

報道によると、人を集めるような目立った活動をすると、点数を引かれる。地元警察は眼鏡型端末「スマートグラス」で、個人の身元を把握できる。スマートグラスが顔認識で市民を特定するので、逮捕につなげやすいのだ。

 

新たな社会階級が生まれた

「AIを用いたテクノロジーが権利を侵害するのでは?」
「政府がAIを使って国民の行動を操るのでは?」

こうした懸念に対して、中国は楽観的だ。多くの人々が抵抗なく政府主導のテクノロジーを受け入れている上に、「AIの厄介な側面が現実になるとしても、遠い未来の話だ」と考えているから、中国の大手メディアも市民も、マイナス面を議論することはほとんどない。