真っ直ぐな眼差しを持つ醤油屋の娘と、彼女を一途に愛する漁師の網元の青年。二人の激動の恋模様を描いたドラマは、日本中が見守る大ヒット作になった。
ジェームス三木(以下三木) 朝の連続テレビ小説『澪つくし』が放送されたのは1985年のことだから、もう34年も経ったのか。
川野太郎(以下川野) この作品でデビューした僕も、おかげさまで59歳になりました。来年還暦ですよ。
三木 俺なんてもう84歳だよ。お互い歳をとったねえ。「昭和は遠くなりにけり」だな。
ペリー荻野(以下荻野) 『澪つくし』は最高視聴率55・3%を叩き出し、歴代の朝ドラの中でもベスト5に入る人気番組です。当時社会に出たばかりだった私も、昼の再放送を熱心に観ていたのを憶えています。まさに、社会現象でした。
川野 大正末期から戦後にかけての千葉県銚子市を舞台に、沢口靖子ちゃん演じる醤油屋の妾の娘「かをる」と、僕が演じる漁師の網元の息子「惣吉」の純愛の遍歴を描く物語。二人は最初から好きあっているのに、家柄の違いや時代に翻弄され、なかなか一緒に生きることができない。
放送からしばらくは、どこに行っても「惣吉さん」と声をかけられるので、「すごい番組に出させていただいたんだなあ」とひしひしと感じていました。
三木 でも、実は初回の視聴率は37・1%だから、当時の朝ドラとしては平均的な数字だった。そこからぐんぐん伸びていった。人気を引っ張ったのは、なんといっても主演の沢口靖子の存在感だな。
荻野 沢口さんは'84年に約3万人のなかから「東宝シンデレラ」でグランプリを獲得して、芸能界に入ったばかりでした。そんな新人をなぜ、いきなりヒロインに抜擢したんですか?
三木 『澪つくし』の脚本執筆中に、たまたま観た『刑事物語3』という映画に彼女がチラッと出演していて、「こんなカワイイ子見たことない!」と。色が白くて儚げなのに、眼に力があってね。すぐにNHKのプロデューサーに連絡したら、彼も「ヒロインはこの子しかいない!」と興奮していた。