『時代』『糸』…中島みゆき「数々の名曲」は、いかにして生まれたか

詩人としての唯一無二の世界観
週刊現代 プロフィール

ポプコン時代から中島の曲のアレンジをしてきた編曲家・船山基紀氏はこう振り返る。

「彼女の作品と出会ったのは、私がまだヤマハ音楽振興会の職員だったころ。当時、ヤマハはポプコンに力を入れていて、私は全国から集まってくる応募曲をコンテスト用にアレンジする役割でした。そんな中、偶然、『アザミ嬢のララバイ』の編曲を私が担当することになったんです。

 

まず、なによりも目に留まったのが『アザミ嬢』という造語。『アザミ嬢って、一体なんだ』とひっかかりました。意味はわからないけど、妙に心に残る。インパクトがあるんです。いま思えば、当時からタイトルひとつ取っても、彼女の歌にはオリジナリティが溢れていました」

歌が身体にしみ込んでくる

この『アザミ嬢のララバイ』が評判となり、船山氏は中島の次作のシングルも担当することになる。それこそが代表曲の一つ、『時代』だった。

「当時、彼女はまだ北海道に住んでいて、東京と行ったり来たりの生活でした。そんな中、ギター1本で録音された『時代』のデモテープを渡されたんです。

『アザミ嬢』のときと同じく、まず『時代』というタイトルに惹かれました。曲を聴いても懐が深く、広がりがある。だからこそシングル盤では、これからなにかが起きる、そんな予感がするイントロをつけました。

彼女の作品と関わってから、もう40年以上が経ちます。それでも、中島さんの芯の強さは変わらない。どうしていつまでもあんな瑞々しい言葉が湧き出てくるのか、不思議に思います」

船山氏が言うように、まるで涸れない泉のようにヒット曲を量産し続ける中島。前出の高橋氏は、まさにその名曲が生まれる瞬間を目撃した。