運命の糸を引き当てた

高校内に特設の記者会見場には150人を超す報道陣が集まり秀喜の登場を待ちわびていた。実は山下も長嶋がくじを引き当てた様子を夢で見ていた。

秀喜が着席し会見が始まった。
「今決まってほっとしています。一段落ついたという感じです」

予想通り星稜高校の松井秀喜を指名したのは、ダイエー、中日、阪神、そして巨人の4球団だった。

長嶋がくじを引く順番は最後。くじが入っている箱に手を入れる。

――引き当てた。
くじを手にしたとき暖かい風がすうっと手を撫でたのを感じた。

長嶋は12年間の充電を経て、この年の10月、巨人軍監督に復帰した。これからの巨人軍に秀喜が必要だと悟っていた。真のスーパースターを作るという使命感を秀喜に対して感じていた。そして、自分の魂を注ぎ込もうと。

長嶋は勝負を賭けてこの場に来た。箱の中にくじは1枚しか残っていなかった。それが当たりくじだった。

――これ以上の運命はない。

長嶋茂雄は松井秀喜との強い運命の糸を感じていた。

長嶋はそんな気持ちを1枚の色紙に託した。

「松井君 君は巨人の星だ ともに汗を流し王国を作ろう 熱い期待を込めて待っている 長嶋茂雄」