胸に響いた「長嶋茂雄の言葉」
10月12日。その夜、食事をしながらいつものようにNHKの7時のニュースを見ていた。普段、秀喜は練習などで夕食をとるのが1人遅かったが、この日はたまたま昌雄とさえ子、秀喜の3人が揃っていた。
いくつかのニュースが報じられたあと、長嶋茂雄の巨人軍監督就任記者会見へと話題が移った。いくつかの質問が投げかけられたあと、突然インタヴュアーから、
「星稜高校の松井秀喜選手をどう思われますか」という質問が飛んだ。長嶋は答えた。
「松井君には大変な魅力を感じております。是非指導してみたいと思っています」
「ええーっ」
昌雄もさえ子もいきなりのことに驚きを隠せない。
秀喜も思わず箸を止めて興奮していた。
――なぜ監督就任の会見で自分の名前が……。
この熱い言葉に秀喜は「うーん」と唸るような声を発した。しばらく考え込んだあと秀喜は言った。
「長嶋さんは僕を思ってくれとる」
強烈に秀喜の胸に響いていた。