消滅寸前のゴーストタウン「虎ノ門五丁目」は今…住民の意外な本音

路地徘徊家がゆく

ああ、虎ノ門と麻布台の空き家群か。起伏に富み、坂をあがったりくだったり、歩いても誠に味のある路地に沿って古い家や商店が続く風景。超高層のオフィスビルや大使館が立ち並ぶエリアにあって、三十余年に渡り昭和後期の街並みが凍結保存されてきたあの一角か。残されてきた理由は、バブル期の大規模再開発計画がなかなか進んでいないからだと風のうわさで聞いている。

編集部からその一角について記事を書けと依頼がきたのだった。明け渡しがほとんど済み、ほぼ無人となった静かな町は、確かに奇妙な美しさがある。それらが今、丸ごと消えようとしていると。

麻布台、在りし日の坂の多い街並み

ピンときた。私は路地徘徊家などと自称して喜んでいるから、編集部はこの地の大規模開発に何か冷や水を浴びせるような視点を期待したのかもしれない。でも、取材を終えてみれば、ストーリーは違った方向に転がっていった。

 

ついに動き出した“ゴーストタウン”

その前に、まずはこの地が空き家ばかりとなった経緯を。

平成の初め、30年前の平成元年(1989年)に虎ノ門五丁目~麻布台に街づくり協議会が発足、再開発計画が持ち上がったことに話は始まる。オフィス街のど真ん中にある過密化した木造住宅群は、防災上の観点からも見直す時期にきていた。

地下鉄日比谷線・神谷町駅付近を通る桜田通りと、南北線六本木一丁目駅付近を通る麻布通りを東西につなぎ、南側の外苑東通りに伸びるT字型の約8.1haもの広大な計画区域

平成5年(1993年)には再開発準備組合が設立され、街づくりが具体的に動き始めた。近年はほとんど空き家となり、都心にゴーストタウンが出現していた。