『同期のサクラ』Hulu HPより

『同期のサクラ』と名著『「空気」の研究』には共通項がある

彼女は決して忖度しない

「私には夢があります」

極めて完成度が高い連続ドラマに違いない。日本テレビ『同期のサクラ』(水曜午後10時)のことだ。12月8日までに全10話のうち8話までが放送されたが、冗漫と思えた場面が一切なかった。遊川和彦氏(64)による脚本、主演・高畑充希(27)の演技、演出のいずれにも隙がない。

特に見事なのは脚本。遊川氏はこれまでに、強い喪失感からの再生などをテーマにした『家政婦のミタ』(同、2011年)など、メッセージ性の強い作品を手掛けてきたが、『同期のサクラ』もそう。物語の中にメッセージがいくつも潜んでいる。

10月1日、LOUIS VUITTONの2020年春夏ウィメンズコレクションを訪れた高畑充希
 

前面に出されているメッセージも3つある。それを高畑が演じる主人公のゼネコン社員・北野サクラが、毎回のように叫ぶ。

「私には夢があります。故郷の島に橋を架けることです」

「私には夢があります。一生信じ合える仲間を作ることです」

「私には夢があります。その仲間とたくさんの人を幸せにする建物を作ることです」

夢が持ちにくい国になったと指摘されて久しい。若い会社員は特にそうかもしれない。だが、サクラは違う。遊川氏は夢を持つことの大切さも暗に訴えているに違いない。

「私には夢があります」。このサクラの言葉の基となっているのは、米国の公民権運動の指導者だった故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師による1963年の歴史的演説にほかならない。

キング師は「I have a dream(私には夢がある)」と宣言した後、「それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である」などと訴えた。

サクラの夢はキング師の夢とは次元が違うかもしれないが、十分に大きく、崇高と言える。見る側の心に響く。夢を持つことの大切さを感じさせる。