かつての国民政党の今
11月30日、SPD(社民党)が党員の投票によって新しい党首を決めた。党首の選出を党員全員の投票に委ねたのは、1993年以来のことだとか。

全党員のうち、投票したのが約半数。そのうえ接戦での決着だったので、新しい党首を支持しているのは、SPD党員の中でも4人に1人という計算になるらしい。
なのに、これが、後述するように、8000万の人口を抱えるドイツの国政に大きな影響を与える可能性がある。なぜかというと、現在、SPDは、与党として国政に参加しているからだ。
SPDは、今年5月、前党首アンドレア・ナーレスが党首の座を放り出して以来、後継者が出ず、幹部3人が臨時で党を運営していた(そのうち一人は9月に病気で離脱)。
なぜ、ナーレス氏が党首の座を降りたかというと、5月の欧州議会選挙でのSPD惨敗の責任を取らされる形になり、頭にきたからだ。確かに、欧州議会選挙の不成績はナーレス氏の責任ではない。彼女が頭にくるのは当然だった。

このコラムでしばしば言及しているように、ドイツ最古の政党であるSPDは、現在、急速にフェードアウト中で、まもなく消滅するのではないかと危ぶまれている。かつてはヴィリー・ブラントやヘルムート・シュミットなどという著名な政治家を輩出した国民政党だったが、今や見る影もない。
それにもかかわらず、なおも中央でCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)と連立し、ドイツの与党として、外相、財相、労働相、環境相などといった要職を占めているのは何故か?
実はCDUも弱体化しており(地方選では、緑の党やAfD〈ドイツのための選択肢〉に抜かれている州もある)、SPDと寄り添う以外、生き延びていく方法がないという事情があるからだ。
しかし、これとて、2017年の総選挙の後だったからできたことで、もし、現在、連立破綻→国会解散→総選挙となれば、CDU/CSUとSPDを合わせても得票は4割行くか、行かないか。もちろん、この組み合わせでは、安定政権はもう作れない。
つまり、現在のCDU/CSUとSPDの連立政権は、政策の策定では一致しないことばかりだが、唯一、「連立を破綻させない」という点にかけては固く意を共にしている。