いよいよ激化の米中貿易戦争で、中国が「負けている」と言えるワケ

日本にも大きな被害が出る
野口 悠紀雄 プロフィール

中国鉱工業生産の伸び低下の重大な意味

7月29日公開、「自由貿易の理念を捨て、中国の成長を阻止する…米国の戦略は是か非か」の「図表5 中国の実質GDP対前年同期比」で示したように、中国の2019年4~6月期の実質GDPは、前年比6.2%増と、1992年第1・四半期以来27年ぶりの低い伸び率となった。

成長率の低下は、その後も続いている。2019年7~9月期の中国の実質GDP(国内総生産)の前年同期比は、6.0%となった。前期から0.2ポイントの低下で、29年ぶりの低水準となった

また、図表5に示すように、10月の鉱工業生産は、前年比4.7%増と、伸びが大幅に鈍化した。これは、リーマン・ショック直後以来の低水準だ。

鉱工業生産の伸びは、2018年の夏までは6%を上回っていたのだが、その後5%台に低下し、19年7月からは4%台に低下している。

だから、18年以降、中国製造業の状況が悪化していることは間違いない。

 

ところで、先に述べたように、中国の純輸出は増加しているので、GDPに対してはプラスの影響があるはずだ。

それにもかかわらず、GDP成長率が低下し、鉱工業生産の伸びが低下しているのである。これはなぜだろうか?

その原因としては、つぎのことが考えられる。すなわち、貿易戦争で中国からの輸出に関税がかかり、その分を中国輸出業者が負担しなければならなくなっている。このため、中国国内の製造業の採算が悪化し、工場がベトナムなどに移転しつつある。

こうした動きが、繊維製品や玩具など付加価値率の低い工場で起きていると考えられる。このため、鉱工業生産やGDPの伸びが低下しているのだ。

アメリカが中国からの輸入に追加関税を掛けると、アメリカ国内の物価が上昇し、アメリカのメーカーや消費者の負担になると考えられていた。しかし、実際には、そうしたことが生じていない。

これは、上述のように中国輸出業者が関税増加分を負担し、輸出価格の上昇を抑えていることを示唆している。つまり、中国は、一方的に負担を強いられていることになる。いわば、「貿易戦争で負けている」わけだ。

トランプ大統領は、「貿易戦争でアメリカが勝っている」と主張しているが、それは必ずしも「強がり」や「はったり」ではなく、現実にそうなっている可能性が高い。

これは、中国にとっては深刻な事態だ。 

アメリカの実質GDPを見ると、対前期比(季節調整済み、前期比)は、2019年第1四半期が3.1%、第2四半期が2.0%、第3四半期が1.9%だ。2018年の値(第2四半期が3.5%、第3四半期が2.9%)に比べると低下してはいるが、あまり大きな落ち込みとはいえない。

いまのところ、アメリカは、それほど大きな影響を受けているようには見えない。

図表5 中国の鉱工業生産(対前年増加率、%)

資料:中国国家統計局(一部のデータが欠落)