秋のお裾分け
/石川・能登半島 滋賀

京都で永観堂の紅葉を見てからというもの、紅葉に対する見方が変わった。自然の中に、何百、何千もの色があることを知らなかった。暑さや寒さの関係で毎年違う、自然が作り出す、今年だけのアート。

神社仏閣ができる前から山岳信仰があったように、絵画や写真というものが、その風景を切り取る前から、山の風景そのものを、人々はアートとも思わず楽しんでいたんだろうな、とも想像する。

今年はすてきな出会いから、さらなる気付きをもらえた。

一つ目は、能登半島、輪島。NHK朝の連続テレビ小説「まれ」で、お世話になったお店。久しぶりにおじゃまし、お店のご主人と話をしていたら、いつも山でキノコや、自然薯なんかを採ってくるという。「今は紅葉だから、山に入るといろんな色があって、本当にきれいですよ」と、なんともうれしそうに、子どものような笑顔で話してくださった。ドキュン。

撮影/萩庭桂太

何日か後、ご主人が山で採ってきたという自然薯を送ってくださった。箱を開けたら、なんと、紅葉した葉っぱが自然薯の包みの上に何枚も散っていた。ドキューン。

二つ目は、滋賀県にある小料理屋さん。なんでも冗談に変えてしまうマスターからは想像もできないほど、手の込んだお料理を丁寧に出してくださる。繊細なお料理の横や下には、この時期ならではの、色とりどりの葉っぱがお料理に合わせて添えてあった。「その辺で取ってきました」と。

「東京にはあんまりないみたいやし」と、その場に飾ってあった紅葉の枝もバツンと切り落とし、お土産にきれいな秋を持たせてくれた。

東京で暮らしていると、なかなか気付くことができない自然の移ろい。お金を出して買ってくるのではなく、お二人のように、自分で見つけたとっておきの1枚を、秋のお裾分けにできるような人になりたいな。「おもてなしの前に、思いやり」。一流の料理人から教わった、都会では手に入らない、地方の豊かな自然がもたらしてくれる、小さい秋の、大切な、感覚。