2020年1月5日にスタートするNHK・BSプレミアムの連続ドラマ『贋作 男はつらいよ』(日曜22時~)にさくら役で出演する女優の常盤貴子さん。これまで私生活について深く語ることがあまりなかったが、今回、仕事だけでなくプライベートで訪れた場所とともに、各地で見て、触れて、感じたことを教えてもらった。

出演作の一作一作を大切にするようになると、出会う人たちが変わり、出会った人たちとの関わり方も変化し、時間の使い方も変わった」という常盤さん。それは、旅においても同じことが言えるのではないだろうか。

今回ご紹介する場所を訪れたことのある人もそうでない人も、常盤さんならではの目線で綴られた魅力によって、新たな楽しみ方を見つけられるはず。

※以下、日常を最大限に楽しむ方法が詰まった常盤貴子さんの初エッセイ『まばたきのおもひで』(講談社)より、内容を一部抜粋して紹介。写真は同書の帯より転載。

笑顔までの距離
/石川・能登半島

「せまい日本、そんなに急いでどこへ行く」。当時小学生だった私は、「確かに日本ちっちゃいもんね。焦らずのんびり行こう行こう」と、標語の思惑通り、ゆっくり行動を心がけていた。

ところがところが、日本は広いよ大きいよ! そんなにのんびり構えていたら、あっという間に寿命を迎えてしまいますから。

私は俳優という仕事柄、日本各地に赴くことが多い。今いる能登半島については、来春(2015年3月)から始まるNHK連続テレビ小説「まれ」の撮影で来るまでほとんど何の知識も無く、輪島といえば漆、というくらいの印象でふわふわと、ただやって来た。

撮影/萩庭桂太

来てみるとその地の良さがどんどん見えてくる。「国際理解や人間関係の心の距離を消すには人と人が直接会うことが一番で、お互いに理解することから世界平和が始まる」。前回の東京オリンピック招致で当時NHK解説委員の平沢和重さんがされたスピーチ。日本国内でも深くうなずける言葉だと思う。

「能登はやさしや土までも」と聞いたことはあったけれど、ピンとこなかった。だって地方はだいたい優しいもの。ところが、来てみて納得。ここ能登では、人柄をこそ文化財に登録してほしいと思うほど、明るくて思いやりに溢れている

例えば、私はタクシーで何度も早めにメーターを切っていただいた。「田舎はどうしても距離が出るさけ〜。高うなってしもうげちゃ、ほんの気持ちやわ」

おばあちゃんは「泥棒さんにも優しぃするげさけ〜、困ったもんやわいねぇ」と笑い飛ばす。

こんなスゴイ人たちがいるなんて知らなかった。駆け引きなしの会話に奇跡を感じる。やっぱり日本は広いと、改めて思う。そこで暮らしている方々には不便なのかもしれないけれど、これは交通の便の悪さと、地形に恵まれたのかも。それがゆえに、守ることができた美しき人柄、風土。

日本には、きっと、まだまだスゴイ所があるんだわ。少し生き急いで、もっともっと巡ってみたいな。皆さんより先に、ここに出逢えた私は、能登の優しさという種をお土産に持ち帰り、全国に笑顔の花をお届けいたしますね。