12月25日 世界初の水晶発振式クオーツ腕時計発売(1969年)

科学 今日はこんな日

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"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

服部時計店(諏訪精工舎、現在のセイコーホールディングスを中心とするセイコーグループ。以下、セイコー社)が世界初の水晶発振式クォーツ腕時計「セイコークォーツ アストロン35SQ」を発売しました。

 

それまで、クォーツ時計としては、スイスのCEH/電気時計研究所(Centre Electronique Horloger)による試作品ベータ1だけしか存在していなかったので、製品としては世界初でした。

1日の誤差は1秒未満と当時としては高精度でしたが、価格のほうも45万円と超高額でした。

【写真】セイコー社のアストロン
  セイコー社のアストロン。写真は1970年代のイギリスモデルと思われる。初代アストロン35SQの画像はこちら

クォーツ(水晶)は石英(六方晶系の石英)のことで、電圧を加えると水晶が圧電体となって変形が生じます。この働きを固有の周波数帯で微少弾性振動するように電圧:電流比(リアクタンス)を持たせたのが水晶振動子(水晶発振子)で、単体素子としては密閉(ハーメチック・シールド)された容器内に、2つの電極が水晶片をはさんだ構造になっています。

一般的には、半導体(トランジスタ)、静電器(コンデンサ)との組み合わせで、発信条件を規定した発振回路を構成します。水晶振動子が登場するまでは、この部分をコイルだけで構成するのが一般的でしたが、それに比べて格段に精度が高いため、時計のほかにも無線機やコンピュータなどに応用されました。

【写真】腕時計の水晶発振子
  腕時計の水晶発振子。水晶発振子と発振回路が起こした32,768Hzの振幅が、針を回すステップモーターを動かす photo by iStock

時計への利用は、半導体素子が普及する以前から真空管によって模索され、大型の据え置き時計では高精度時計として、少し前から実用化されていました。一定周波数(時計の場合、32,768Hz)で発生する電気振動の正確さが非常に高精度なため、標準時の決定や船舶用、放送用などに採用されました。

そしてセイコー社は、超小型の水晶振動子による腕時計の開発に、1950年代後半から取り組みはじめたのです。水晶振動子そのものから開発したため、製品として送り出すまでに10年の歳月を要しました。

【写真】クォーツ時計の内部
  一般的なクォーツ時計の内部 photo by iStock

その後、1970年代にセイコー社がクォーツ腕時計の特許を公開すると、クォーツ時計ブームが起こり、価格も徐々に下がってきました。クォーツ時計の導入に消極的だった機械時計のメーカーは、この時期に大変な苦境を強いられたということです。

ちなみにセイコー社の「アストロン」のブランドは今も残っています。現行モデルは簡単なボタン操作でGPS衛星電波から現在地の正確な位置・時刻情報を取得する世界初のGPSソーラーウオッチで、2019年にはGPSソーラーウオッチを初代モデルの意匠で復刻させた50周年モデルも発表しました。

なお、2018年には、初代モデルが国立科学博物館による重要科学技術史資料に登録されました。

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