12月22日 化石魚「シーラカンス」の発見(1938年)

科学 今日はこんな日

地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

南アフリカ、イーストロンドンの博物館の学芸員で、魚類の標本コレクションを担当していたマージョリー・アイリーン・ドリス・コートニー=ラティマー(Marjorie Eileen Doris Courtenay-Latimer、1907-2004)が、この日、後に「生きた化石」と形容される〈シーラカンス〉を発見しました。

【写真】ラティマー氏と発見した個体の剥製
  マージョリー・アイリーン・ドリス・コートニー=ラティマーと彼女の発見したシーラカンスの剥製 photo by The South African Institute for Aquatic Biodiversity

彼女は、普段から地元の漁師と交流があり、珍しい魚がかかったら連絡してほしい、と頼んでいました。この日、トロール船の船長からの「グロテスクな魚がかかった」という連絡を受けて市内の埠頭へ行くと、カルムナ川の河口付近で獲られ山積みされていた魚の中に、偶然青いひれだけが突き出ているのを見つけたのでした。

それは、長さ1.5mほどで硬い鱗に覆われ、脚のような太い4本の鰭がありました。わずかに紫がかった薄い青色で、かすかな白い斑点の上に銀色から青を経て緑に至る虹のような光沢がかかったような美しい色合いをしていました。

【写真】シーラカンスの模型
  1938年発見の個体をモデルに作られたシーラカンスの模型。アメリカ自然史博物館所蔵のものphoto by gttyimages

ラティマは、博物館に魚を持ちかえって文献を調べましたが、その魚を同定することはできませんでした。博物館に保存設備がなく、冷蔵倉庫の会社などにも断られたため、やむなくスケッチをとり、同定のために知り合いの南アフリカ・ロードス大学の生物学教授、J. L. B. スミス(James Leonard Brierley Smith、1897–1968)博士に送り、死体は剥製にしました。

 

折しもスミス博士は長期不在でスケッチを確認したのは翌1939年の2月でしたが、すぐに白亜紀末に絶滅したものと考えられていた古代魚 「シーラカンス」に特徴が一致することに気づき、現地へ向かいました。そして、ラティマの剥製を確認して、シーラカンスの現生種であることが判明したのです。

博士は、発見者と発見場所にちなんで「ラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae)」と命名、それを科学雑誌『ネイチャー(Nature)』に発表しました。

発掘された化石から、シーラカンスにはいくつかの種類があることがおおよそわかっていました。約6500万年前(中生代白亜紀末)の大量絶滅"K-Pg境界"以降の化石が未発見だったため、大量絶滅時にシーラカンスも全種が絶えたものと思われていました。そのため、この発見は大きな話題となりました。

  シーラカンスは「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」第 I 類に指定され、民間水族館などでは展示できない。沼津にある深海水族館でのシーラカンス・ミュージアムは貴重な展示例とのこと

スミス博士が、2体目のシーラカンス発見に立ち会ったのは、14年ほど後の1952年のことでした。発見場所は、アフリカの南東にあるロコモ諸島のアンジュアン島(Anjouan)付近。現地では時々網にかかり、漁師には「ゴンベッサ」(役に立たないの意、味が悪く食用に適さないことから)という名前で知られていたことから、現在では南アフリカよりもこちらのほうが分布域の中心だと考えられています。

【写真】ロコモ諸島での発見
  ロコモ諸島で発見されたシーラカンスを観察するスミス博士(右から2人目)。この時の南ア首相D. F. マランの協力への謝意から、マラニア・アンジュア(Malania anjounae)と名付けたが、後にラティメリア・カルムナエと同種と結論づけた photo by gettyimages

また、1992年にはインドネシアのメナド島でも「インドネシア・シーラカンス(Latimeria menadoensis)」が発見されています。

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