Q:ウォーキングなら「やってみよう」という気になるけれど、認知行動療法って聞くとちょっと抵抗があるんですが?
A:認知行動療法、などと聞くとえたいのしれない心理療法の印象から「せっかく腰痛や肩こりが治る新しい方法と思っていたのに」とがっかりする人もいると思います。
けれど「ウォーキング」といえば立派な運動療法です。
ウォーキングを「そんなことしたって無駄に決まっている!」とか「医者なのにもっとちゃんとした治し方はないの?」というように受け取ったら、決して腰痛に効果はありません。
患者さん自身がウォーキングを介して「気持ちを切り替える」ことによって腰痛を治すといっていいのです。これこそが「運動を介した認知行動療法」なのです。
一つだけ言えることがあります。このような治療法に対して「試しもしないですぐ に拒否反応を起こしてしまうような人」ほど腰痛は治りません。残念ながら必ず慢性化します。
なぜならそういう拒否反応の根底には「どうせそんなことをしても無駄に決まっている」という間違った先入観、つまり認知のゆがみがあるからです。科学的にも実証されたこれらの治療法を試さないのは、とてももったいないことです。
「食わずぎらい」にならないで、ぜひこれらの方法を理解してみようと前向きになってみてください。「ほんのちょっとだけ話を聞いてみよう」と思えるようになったら、慢性の腰痛も半分は治ったようなものです。
Q:私の80代の母親は、整形外科に行っては、よく「加齢のせいだから仕方ない」と言われて落ち込んで帰ってきます。母親に何かいいアドバイスはありませんか?
A:私は、患者さんに「年のせいだから」とか「一生つきあってください」ということを今まで言ったことがありません。そんな決めつけるようなことを言う医者にありがたがって通院する必要は全くありません。とっとと医者を変えてしまえばいいんです。
「決めつけない、あせらない、あきらめない」この3つが大事なこと。もし患者さんが自分で「年のせい」と決めつけていると、へそ曲がりの私は「なんでも年のせいにしないでください。なんで、そう自分で決めつけるんですか」とつっこむことにしています。
誰かに治してもらうのではなく、自分で治せる方法を考えてみる。ちょっとだけ気持ちを前向きにすればすべてはうまくいくようにできています。そして「あれもできない、これもできない」という考え方から「これならできる」ということに目を向ければ、たとえ痛みが完全になくならなくても充実した人生を送れるのです。
どうするかは医者ごときに決められることではありません。最終的には患者さん自身、ご自分だけが決められることなのです。
Q:では最後に、腰痛がなかなか治らない方にメッセージをお願いします。
A:よく患者さんから「腰痛がある患者にとって、してはいけないことは何 ? 」と質問されます。私は、この質問に対する「絶対に間違いのない回答」を一つ用意しています。
それは、「腰痛の時にしてはいけないことがたった一つだけあります。それは『してはいけないことを考えること』なんですよ」というものです。こわがって動かなくなって腰痛がよけいに悪くなるなんてもったいない人生じゃないですか。
「決めつけない、あせらない、あきらめない」この3つを大事にして、まず一歩を始めていきましょう。