腰痛はマインドフルネス・ウォーキングで治す!

あなたの腰痛もきっと良くなる
谷川 浩隆 プロフィール
 

マインドフルネス・ウォーキングは「今」に集中する

Q:認知行動療法についてもう少し詳しく教えてください。

A:認知行動療法は代表的な「メンタルな治療法」の一つです。精神科や心療内科で行われている治療法で、簡単にいえば、患者さんの考え方(=認知)を修正することに よって生活(=行動)を改善する治療です。

そもそも患者さんは「痛くてできないこと」ばかりを考えてしまいがちなのですが、「痛くてもできること」を考えられるように認知を修正していきます。

この認知の修正によって、少しずつからだを動かし散歩ができるようにする。さらには外出が可能になるように、行動を変化させ改善させていく。これが腰痛に対する認知行動療法です。認知行動療法の要素を取り入れたウォーキングをマインドフルネス・ウォーキングといいます

Q:マインドフルネス・ウォーキングとはどういうものでしょう?

A:ウォーキングだけなら単なる運動療法ですが、過去のこだわりや未来の不安を断って、「今」だけを見つめながらウォーキングをする。今だけを見つめる、という考え方は「マインドフルネス」という方法で広く紹介されています。これはトレーニングによってより上手にできるようになります。

マインドフルネスには「気づき」とか「注意の集中」という意味があります。こころを穏やかにして、自分のからだで感じる「今の瞬間」に意識をあてていく方法です。禅や瞑想に似ています。これがマインドフルネス認知療法として、うつなどのメンタルの疾患の治療に取り入れられています。

マインドフルネスとウォーキング、この二つを結びつけられないだろうかという視点から考案したのが腰痛のためのマインドフルネス・ウォーキングです。


Q:マインドフルネス・ウォーキングの具体的なやり方を教えてください。

A:マインドフルネス・ウォーキングでは、背すじを伸ばして、ややおおまたに、それでいてからだが緊張しないように、楽な気持ちを保ったまま少しスピードを上げて歩きます。

背すじを伸ばして行進のように手を大きく振って歩けば、背中から肩甲骨、両腕や 首まわりの筋肉にとても効果的です。この時に決して筋肉が緊張しないようにしてください。リラックスして歩くこと。ウォーキングは肩のストレッチや筋トレにもなり、腰痛だけではなく肩こりにもよく効きます。

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この時「歩きながらのマインドフルネス」を意識してみてください。歩きながら気持ちを平穏にして、歩くことに集中するのです。ふと気がついたら「悩み事を繰り返し考えていて、どこを歩いてきたか思い出せない」ようではマインドフルネス・ウォーキングとはいえません。

「こころ、ここにあらず」ではなく、こころを「ここ」に引き留めてください。過去と未来に対する不安を頭の中から追い出し「今」に集中しましょう。これが、私が考案して、患者さんに奨めているマイドフルネス・ウォーキングです。

目安としては1日2キロメートル、やや汗ばむ程度の速さで20分から30分かけて歩いてください。腰痛は改善されていきます。

Q:ウォーキングをした結果、よけいに痛くなることもありそうですが?

A:腰痛があると、なるべく動きたくなくなります。しかし安静にしていなくても痛みは決して悪化しません。人間のからだはそんなに簡単にこわれないようにできているのです。むしろじっとしているとよけいに痛くなってきます。

寝たきりでからだを動かすことができない患者さんを介助して寝返りをさせたことがありますか?とても痛がります。からだは動かさないでいると痛くなるのです。

だから、からだを動かして痛みを治していく。こんなことを確認しながら患者さんの不安をとっていくのもマインドフルネス・ウォーキングです。マインドフルネス・ウォーキングは、患者さんが気づかないうちに認知行動療法をしているということになります。

認知行動療法が日本で普及しないワケ

Q:マインドフルネス・ウォーキングが腰痛に効果のある認知行動療法ということですが、そんなに腰痛に効果がある認知行動療法がなぜ日本では普及していないのでしょうか?

A:諸外国では、すでに大人数がグループになって認知行動療法を行う集団認知行動療法を腰痛治療に取り入れているところもあり、プログラムを使って慢性腰痛の患者さんの社会復帰を支援しています。

しかし、日本では現在でも、どうしても精神や心理に対する治療には偏見があり、患者さんは簡単にこれらの治療に近づけないのが現状です。

一昔前の整形外科医の間ではこのような心理的治療はまったく相手にされませんでした。「手術で治せないから認知行動療法などという怪しげな治療法に逃げている」ということで白眼視さえされていたのです。

また現下の日本では腰痛に対する認知行動療法は保険診療にならないことがこの治療法が普及しない理由のひとつです。認知行動療法を行うには多大な人的コストと時間がかかります。そのため認知行動療法で腰痛を治すということは日本の現状ではなかなか難しいのです。

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