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腰痛はマインドフルネス・ウォーキングで治す!

あなたの腰痛もきっと良くなる
 

日本人の4人にひとり、2800万人が悩んでいるといわれる腰痛。それだけに過去さまざまな「腰痛治療法」が話題を集めてきました。今も腰痛がある時に安静にしていたらいいのか、それとも動かしていいのか、あるいはマッサージなどが有効か、いろいろな意見がネットにあふれています。

最近、NHKの健康番組はじめ、さまざまなメディアで「新しい腰痛治療法」として取り上げられているのが、「心理的アプローチ」を重視した考え方。整形外科医と精神科医、理学療法士らが連携して治療を行うことで、整形外科医単独の治療より効果があると報じられています。

こういった治療法を「心療整形外科」という用語で、いち早く提唱してきたのが、整形外科医の谷川浩隆さん(57歳)。

腰痛には、ストレスや不安などメンタルの要素が深く関係しています。そして現代はストレス社会。腰痛は今や国民病ともいえる疾患となってきました。ただし、腰痛に悩んでいる人にとって、医者から『メンタルの問題もあります』『精神科を紹介しましょう』などと言われて、医者への不信感が増すことも多く、これでは治る腰痛もなおりません。」

「整形外科医だからこそできる心理的アプローチが必要なのです。腰痛の原因は、こころではなくほぼ必ずからだにあります。ただその原因が整形外科医にははっきりわからないことが多いだけなのです」

谷川浩隆さん

谷川さんは自ら精神科を学び、臨床に従事し、心身医学的な方法論を取り入れた「心療整形外科」を真っ先に学会や論文で提唱しました。そして、たくさんの患者さんと向き合った結果、「マインドフルネス・ウォーキング」が、肉体的にもさらに心理的にも腰痛に大変な効果があることに気がついたのです

このたび、『腰痛は歩いて治す からだを動かしたくなる整形外科』を上梓した谷川さんに、腰痛の原因、腰痛に自分で対処できる方法、いかにして腰痛を克服していくか、これまでと違った腰痛の治し方があるのか、などを聞きました。
 

とにかく体を動かして治す

Q:腰痛は安静が必要なのでしょうか、動かしたほうがよいのでしょうか?

A:腰痛の治療の基本は「動かして治す」です。腰痛になったら以前は安静が第一と考えられていましたが、最近ではギックリ腰のような急性腰痛でも発症のその日から、動かせる範囲で活動性を維持することが治る早道だといわれています。

 しかし腰痛の中にはごくごく低い割合ですが、レッド・フラッグ、つまり「危険信号」と呼ばれる疾患があります。内臓疾患や感染症、腫瘍性疾患、骨折などです。これらの疾患は早期に発見して治療をすることが必要です。腰痛の中からレッド・フラッグを見つけ出すのが医者の重要な役目ですから、まずは医者に必ず診てもらうことをお勧めします。

 腰痛があって医者にかかったけれど、レッド・フラッグのような深刻な病気がなくて「大きな異常はありません。とりあえず痛み止めを出しておきましょう」などといわれた方も多いと思います。むしろ腰痛のほとんどはこのように原因がはっきりしないことが多いのです。

 医者から「異常ありません」といわれたのに腰痛に悩んでいる方は「医者にしてもらうこと」ではなく「自分で始められること」を考えてみてはいかがでしょうか。そしてその「自分で始められること」の第一歩が「動かして治す」ということなのです。


Q:では、どんな運動がいいのでしょう?

A:慢性の腰痛には運動が有効なことが知られていますが、重要なことは「どんな運動でも同じ効果」であるということです。

2019年に改訂された腰痛診療ガイドラインには「現時点では効果的な運動療法の種類を明確に示す論文はない」と書かれています。とにかく「からだを動かす」ということが重要で、からだを動かすならどんな方法もすべて正解だというのです。

えてして、どんな運動がいいのか悩んでいる人ほど、「悩んでいるだけ」で実際にからだを動かしていません。体操でもいい、ウォーキングでもいい。とにかくからだを動かし始めることが大切です

Q:いままでも、特殊な体操やエクササイズが「この方法が腰痛に一番効果的」ということを売りにして流行してきましたが?

A:実は、運動ならなんでもよいのです。でも、よりスペシャルな、簡単にできそうな方法を提案したほうが悩める人にストレートに届き、具体的な方法をイメージしやすい。「なんでもよいから動かせ」より「〇〇がいい!」と断言してあげた方がいいという、ただそれだけのことです。

私も悩んでいる患者さんに、診察室で「何でもいいんです」とは言いません。私は「ウォーキングをしてみましょう」と奨めますが、それは患者さんがイメージしやすいからです。

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Q:ウォーキングはなぜ腰痛にいいんですか?

A:ウォーキングは決して足だけのトレーニングではありません。「歩く」という動作は足だけでなく、体幹筋、上半身、肩のまわりの筋肉など全身の筋肉を使うのです。

さらにもう一つの重要な点は、ウォーキングは最も手軽にできる、そして効率の良い有酸素運動であり、からだだけではなく脳や気分にも影響するメンタルな効果もあるのです。

ウォーキングは身体的治療ですが、同時に心理的治療にもなっているのです。最近、心理療法の中でも認知行動療法という治療が腰痛に効果があることが知られてきました。ウォーキングはまさにその認知行動療法であるといえるのです。