大人気『おっさんずラブ』シリーズが斬新かつ画期的だった理由

歴史とのつながり、新しいメッセージ…
佐伯 順子 プロフィール

なぜ、王道の男子寮ものの男性同性愛物語が、最新のテレビドラマで復活しているのか?

『おっさんずラブ』は昨今のテレビドラマにありがちな人気漫画原作ではなく、オリジナル脚本であり、脚本家が昭和の漫画や小説の焼き直しをしたとは言い難い。

にもかかわらず、結果として王道への回帰というべき現象がみられるのは、男だけの生活空間がはぐくむ男どうしの思慕という設定が、そうではない設定よりも、より幅広い視聴者に受け入れられやすいからではないか。

“お茶の間”での視聴というスタイルは低下したとはいえ、テレビが送り出すドラマというコンテンツは、足を運んで劇場に行ったり、積極的に講読したりする漫画本よりも、日常生活に浸透しやすい側面をもっている。

生活をシェアするという条件なしに、男どうしが好きになる設定を理解するには、一般視聴者にはハードルが高いが、男しかいない生活空間で物理的接触も多ければ“自然と”身近にいる相手=男を好きになるよね、という感情移入のしやすさが、『おっさんずラブ』の人気の背景にはあるのではないか。

 

当事者への影響とエンパワメントの可能性

つまり『おっさんずラブ』は意図せずに、男性同性愛の歴史的状況を踏襲しつつ、視聴者への受け入れやすさももたらしているわけだが、それは同時代の当事者にとっては正負の影響がありえる。

というのも、男どうしの恋心の源が、“男しかいない生活空間における環境的要因”として描かれると、そうではない環境でも男性が好きという性的指向をもつ当事者の実態を十分に描ききれないからである。

また、「おっさん」の黒澤は、シーズン1、2を通じて女性との結婚歴があり、シーズン2の四宮も子供がいることが判明するので、中心的な登場人物は、女性に無関心な当事者として描かれてはいない。

女性を性的に受け入れない当事者を描く場合、ヘテロの視聴者の抵抗感をこえにくい可能性もあるが、黒澤の場合、シーズン2では娘の恋を応援しようとするやさしい父としての性格も描かれるので、ホームドラマ的な要素を含み、当事者ではない視聴者に、やはり受け入れやすい設定になっている。

主人公の春田も、シーズン1では女性との結婚願望があり、牧とルームシェアを経験するなかで牧への愛にめざめるため、ヘテロの視聴者が身近に感じやすい初期設定となっている。