吉野彰氏 Photo by Getty Images

ノーベル化学賞、吉野彰氏告白! 受賞を決めた「過去と未来」

英知の結集が生んだリチウムイオン電池
2019年にノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰氏が、同年10月15日に日本化学会が主催するイベント「CSJ化学フェスタ2019」に登壇した。

吉野氏はなぜノーベル化学賞を受賞できたのか? その理由を交えながら、「リチウムイオン電池の開発経緯とこれから」を語った。

(サイエンスポータル編集部 腰高直樹)

吉野彰氏のノーベル化学賞受賞理由は?

受賞の連絡を受けてからのこの1週間は嵐のような日々でした。今日は受賞が決まってからおそらくはじめての講演になります。

ノーベル化学賞受賞について、本人としての立場と評論家としての解説の両方で話したいと思います。

吉野彰氏
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まず、「リチウムイオン電池の開発」がノーベル化学賞を受賞した理由は大きく2つありました。

1つは、現在のIT社会の実現に大きな貢献をしたということで、こちらはもう過去の話ですね。もう1つは、環境・エネルギー問題の解決に向けて大きな可能性を秘めている具体的な技術の1つであるという、未来に向けてのものでした。

 

「カーボン材料を負極、リチウムイオン含有金属酸化物を正極とし、電気化学的インターカレーションに基づく非水系電解液二次電池」。これが、リチウムイオン電池の一般的な定義とされるものです。

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これをもとに、研究の歴史を順に説明します。

数多の英知が集った研究

説明は後ろの方からいきます。「非水系電解液二次電池」。リチウムイオン電池は充電放電を繰り返すことができる電池「二次電池」で、「非水系電解液」を使ったものになります。

リチウムを用いた電池ができる以前、電池といえば乾電池、鉛電池など水溶液を使ったものでした。リチウムイオン電池がここまで小型軽量になったのは、水の代わりに有機溶媒を使った電解が提案されたことによるものです。

最初に提案した人物はハリス博士という方で、1956年に彼の学位論文で提案しています。彼は論文を出して以降、電池や関連分野で論文を出しておらず、私は彼のその後については存じておりません。ただ、非水系電解という新しい提案がなければ、今のリチウムイオン電池はありません。

その次に、「電気化学的インターカレーションに基づく」という部分。リチウムイオン電池の原理は「リチウムイオンが出たり入ったりする」とよく言われます。