ジャパンディスプレイの経営危機、いよいよインパール作戦じみてきた

まさにモラルハザードの極致
加谷 珪一 プロフィール

上場直後に2度も業績を下方修正したわけだが、これは、20代の若者が起業して急成長したベンチャー企業の話ではない。JDIは日本を代表するメーカーの液晶部門を統合し、政府が全面支援した国策企業である。

しかも同社は売上の4割をアップル1社に依存するという特殊な事業構造である。特定の外国企業1社に依存していることは、極めて大きなリスク要因だが、逆に言えば、アップルによる発注予定さえしっかり押さえていれば業績の予想はたやすいということでもある。

アップルは20兆円以上を売り上げる超巨大企業であり、製品の出荷が少し遅れただけで世界の市場が混乱するほどの影響力がある。このため、アップルの部品調達やコスト管理は極めて厳格であり、適当な数量を取引先に発注することはあり得ない。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

アップルのような企業が主要顧客であるにもかかわらず、同じ年度に2回も業績を大幅下方修正するというのは、内部管理が杜撰か、過剰な業績目標をかかげていたのかのどちらかである。おそらくはその両方だと思われるが、一般論として、こうした組織は不正の温床となりやすい。カンのよい市場関係者であれば、上場した当初からJDIの経営に対しては相当な警戒感を持っていたはずだ。

危険な兆候はほかにもあった。同社は石川県に1700億円を投じてアップル向けの工場を建設しているが、何と、この工場の建設資金の多くはアップルが負担していた。

ビジネスの世界において、製品を販売している顧客に資金の面倒をみてもらうというのは御法度である。しかもアップルは同社の売上高の4割を占め、同社の生殺与奪を握る最重要顧客である。そのような相手に資金面まで握られていては、価格交渉などできるはずがない。こうしたあり得ない決断を経営陣が行ってしまうことそのものが、かなりの異常事態であり、強烈な危険信号である。