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グレタ騒動で注目、いま中央銀行は「環境問題」に取り組むべきか

制御すべきは「気候」ではなく「物価」

今年の国連気候変動サミットで、スウェーデン人の環境保護活動家であるグレタ・トゥーンベリさん(16歳)がスピーチに立ち、全世界の大人たちに向けて地球温暖化の警鐘を鳴らしたことは記憶に新しい。いま地上全体で気候変動問題が喫緊の環境課題になっていることは間違いないが、ここへきて中央銀行までがそこに乗り出す動きを見せていることはあまり知られていない。金融政策で気候変動問題に取り組むということははたして妥当なのか、そして可能なことなのか――。金融業界で起きている最新の動向について、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が緊急レポートする。

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中央銀行が「金融政策」で環境問題に取り組む…?

11月にECB総裁に就任したラガルド氏を巡ってはまだ金融政策を議論する最初の政策理事会が訪れていないこともあって、評価について論じるのは尚早である。

しかし、尚早であることを承知の上で、ここにきて断続的に報じられている不安な動きを論じてみたい。

それはラガルド総裁が今回の修正作業の一環として、気候変動に関する論点を組み入れることに関心を示しており、環境問題を金融政策運営における重要な論点にしたい意向があると言われていることだ。

 

ちなみに、ラガルド体制と同タイミングで発足した新たな欧州委員会を率いるフォンデアライエン新委員長も、欧州議会における演説で「The European Green Deal(欧州のグリーンディール)」はマストであると強調しており、やはり環境問題を新体制で重視する論点として掲げている。

新しいEUの2トップが環境重視のスタンスを大っぴらに語るようになっていることは欧州が持つ環境問題への意識の多寡が他国・地域よりも強いものであることを象徴していると言って良い。理想に振れやすい欧州だけにその過剰な動きが何らかの「歪(ひずみ)」を生むのではないかという不安は抱く。

確かに環境問題は重要であり、無関心を決め込んでいいものではあるまい。しかし、だからといってそれを中央銀行が考慮すべきかどうかは全く別問題ではないのか。

率直に言って環境問題を斟酌した金融政策運営は無理筋である。今回の本欄では(1)政策波及経路が想像できない、(2)役割区分を取り違えている、という2点から考察したい。気候変動が「重要か、重要ではないか」という視点ではなく、「中央銀行がやる筋合いなのか」という視点を持って評価すべき話だと筆者は考えている。