マクドナルドが苦しんだ「経営の逆回転」とはなんだったのか

原田泳幸氏が残したもの
福田 健 プロフィール

しかし、市場は生き物だ。消費者は気まぐれに嗜好を変える。原田の掟破マーケティングはこれまでのような効果を出せなかった。既存店売上高は6月こそプラスだったものの、7月以降は前年を下回る。これを受け、8月には2013年の業績予想を2005年以来となる経常減益に下方修正した。「原田マジック」は万能の魔法ではなかったのだ。

現実を直視しがたかったのだろう、原田は8月の会見で苦々しく話している。

「(低価格メニューの拡大策を)開始したにもかかわらず、お得感が下がることはありえない。申し上げにくいことだが、メディアが『100円マックが消えた』と盛んに報道したせいではないか」

この直後、原田体制は幕を降ろした。経常減益と既存店売上高の減少が確実となって1ヵ月も経たない2013年8月27日、日本マクドナルドは、後任のCEOにカサノバを据える人事を発表する。10年近くにわたって君臨したマクドナルドのトップの座を明け渡した瞬間だった。

退任の会見で、原田は業績不振について言及することは一切なく、「あくまでも“交代”であって“退任”ではない」と強調した。だが、その説明に納得するメディアはほとんどなかった。

そして原田が退いた後、彼が打ち出した栄光の改革の成果が、いよいよ本格的に逆回転を始めることになる。

 

相次ぐトラブル

原田の後を継いだカサノバは「マーケティングの専門家として将来を嘱望されていた」(当時を知る元幹部)。

たしかに、2013年夏にCEOに就任して以来、彼女は原田とひと味違ったマーケティングを展開した。家族客向けに遊具設備を充実させた。2014年4月にはアボカドを使ったハンバーガーを投入し、同年8月には子どもに人気のゲーム「妖怪ウォッチ」のグッズをおまけにつけた。

それでも客数は減り続け、業績は急降下した。2013年、直営とFCをあわせた全店売上高は5044億円と前年比で約5%減少、経常利益も102億円と前年から半分以下にまで落ち込んだ。