なぜ中世の日本人は「犯罪者の家を焼き払った」のか

日本の刑罰観を解き明かす名著が復刊
清水 克行 プロフィール

30年ほど前、本書を初めて手にしたときの書店の光景から、最後のページを閉じたときの部屋の日照ぐあいまで、私はいまでも鮮明に覚えている。我が家の書架に雑然と並ぶ数多くの本のなかで、そんなのは本書ぐらいである。大学時代に本書と出会ったことが、私が日本中世史研究への道を歩むきっかけの一つとなったことは間違いない。

ただ、「思い出の1冊」というのは、えてして時が流れて読み返してみると、複雑な感慨を抱かせることがある。若い頃、夢中になった本を大人になって読み返してみると、さほど面白いとは感じなかったり、逆にそれを面白いと思って貪り読んだ自分を気恥ずかしく感じてしまったり、ということは往々にしてあるものだ。

 

ところが本書に関しては、いま読み返しても、なお学ぶところ多く、なんど読み返しても、そのつど新しい発見がある。本書のうちの、いくつかの章については、かつて私も生意気な異論を唱えたりしたこともあるが、本書全般で展開されている議論のスケールをまるごと受け止めることは、まだ叶わないでいる。たぶん、このさきも私は本書から多くを学ぶことになるだろう。

今回の文庫化では、4人の著者の指導をうけた桜井英治氏による「解説」が新たに加えられ、本書刊行時の研究状況や、4人の親密な関係性が具体的に説明され、当時を知らない読者にも本書の研究史上の位置が理解できるように配慮がなされている。

私にとっての「思い出の1冊」を、はたして新しい世代の読者がどのように受けとめるのか。再刊された本書が本当の意味での「中世史ブーム」を再び蘇らせることになるのか。私はその反響をひそかに楽しみにしている。