国は戦争被害者が死ぬのを待っている?戦後補償問題の「厳しい現実」

この悲劇を繰り返さないために…
栗原 俊雄 プロフィール

被害の認定が難しいという現実

全空連はおよそ30年ぶり、15回目の法案提出を目ざして国会議員たちに働きかけてきた。そうした中で超党派の議員連盟が発足。現在の議連会長は衆院議員の河村建夫元官房長官である。

議連は2017年4月、国賠訴訟の元弁護団とともに「空襲等民間戦災被害者に対する特別給付金の支給等に関する法律」の骨子素案をまとめた。対象は生存する身体障害者やケロイドを負った人に、一律50万円を支給するものだ。年金ではない。一度だけ給付の50万円だ。

対象者は推計で1万人、総額50億円。巨額ではある。しかし首相主催の宴会、今話題の「桜を見る会」1回に5000万円以上の税金を使っていること、あるいは1機100億円以上する米国製戦闘機を100機も買うことから考えると、50億円は余りにも低額だ。

さらに言えば、空襲で被害を受けたのは身体障害者だけではない。まず焼き殺された人たち。生き残っても、精神に傷を負った人もいただろう。また心身に傷がなかったとしても保護者を奪われた戦災孤児がいる。財産を焼かれた人もいる。そうした膨大な被害者を、この法案は対象としていない。背景には弁護士や議員らの「当事者が健在なうちに何とか立法を」という思いがある。

 

議連は事務局長の柿沢未途衆院議員が奔走し、野党のみならず与党からの参加を得た。ただ前述の骨子ができてから2年半が過ぎたが、未だ国会に提出されていない。

空襲被害に限らず、戦後補償問題では政府が頑強に抵抗する。拙著『戦後補償裁判 民間人たちの終わらない「戦争」』(NHK出版新書、2016年)などで指摘してきた通り、為政者たちは「補償をしたら、際限なく広がっていく」と懸念しているのだ。財政難のおり、その懸念はなおさら強い。

さらに空襲被害者の場合、被害の認定が難しいという現実がある。敗戦から74年。当事者が「空襲でけがをした」と主張したとして、それを客観的に証明し、国が認定することは容易ではない。空襲議連が作成した法案骨子は、こうした課題を乗り越えるべく練られたものだ。つまり国家財政に響かない程度の予算で、対象者は可能な限りしぼる、ということだ。

それでも、見通しは立っていない。河合さんら全空連のメンバーや弁護士らは、議員に直接働きかけるロビー活動に力を入れてきた。効果もみえてきた。

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