ドラッグ、マルチ商法を経験した異形の作家が〈地面師〉を描くまで

『地面師たち』著者・新庄耕インタビュー
新庄 耕 プロフィール

彼らには、単純に「お金がほしい」っていう動機が第一にあるんだろうけれど、しかしそれだけだろうかと思ったんです。尋常じゃない執念がないと、そんな面倒くさいこと最後までたぶん完遂できない。だとすれば、情熱を超えた、ある種の「狂気」も必要になってくるだろう、と。

地面師たちの手口や手法について調べていくうち、でもこれって小説も似たようなところがあるよなって何度も思うようになりました。

 

小説も、結局は虚構です。作者が頭の中で作り上げた嘘にほかならない。でもそこに登場する人物の特徴、言動、感情をえがいていくうち、まるで本当に存在しているかのように思え、ときに深く感情移入してしまう。虚構の出来事に、実際に自分が体験したと錯覚するほど感情を激しく揺さぶられてしまいます。

物語の力で虚構を本物に仕立て、相手を騙し通す――そういう意味では、地面師も小説家も同じことをやろうとしているのではないか。地面師たちの執念や狂気に対して、私自身の創作への態度に共鳴するものを感じてしまったんです。

見方を変えれば、この作品は、読者と私との、ある種のゲームのようなものかもしれません。読者を『地面師たち』という物語で最後まで騙し切り、感情を揺さぶることができるか、どうか。それが問われるように感じています。

『地面師たち』は私がもっている全ての技術と気力をふりしぼり、満身の力を込めて書きました。この作品が、一人でも多くの人に届けば嬉しいです。