ドラッグ、マルチ商法を経験した異形の作家が〈地面師〉を描くまで

『地面師たち』著者・新庄耕インタビュー
新庄 耕 プロフィール

それとは別の機会に、あくのふどうさん氏、テツクル氏というお二方と歌舞伎町の台湾料理店で会食しました。テツクル氏は実際に複数の地面師と面会した経験をお持ちで、某大物地面師に小指が足りないことをはじめ、その時にいただいた情報も大変役立っています。

全宅ツイのみなさんは私のデビュー作『狭小邸宅』を高く評価してくださり、それをきっかけにSNSから生まれた縁ですが、彼らとのディスカッションの積み重ねからもリアリティが生まれているように思います。

 

ドラッグを絶っての猛勉強

――新庄さんはこれまでブラック労働、ネットワークビジネス、大麻やドラッグなど、一般に目を背けたくなるようなダークな題材を選んで執筆されています。そういった暗いモチーフにはご自身の体験が反映されているのですか?

必ずしも自分の経験を反映しているわけではなく、取材から学び、構築していく部分がほとんどです。ただ、そういう題材選びには、もしかしたら自分の過去が影響しているかもしれません。

私は川崎で青春時代を過ごしたのですが、周りにいたのは、いわゆる「不良」ばかりでした。のちに半グレやヤクザになってしまったり、塀のむこう側に行ってしまった面々も多く、中には命を落としてしまった人間もいます。十代の後半の頃は、クラブカルチャーが盛り上がった時代でもあり、毎日のようにクラブで遊んでいました。本や漫画は気晴らしに読んでましたが、勉強なんか全くしません。

クラブ遊びの中で、ドラッグに手を出したこともありました。あの頃センター街には、違法ドラッグを売り歩く外国人もたくさんいましたが、私はもっぱら、まだ適法だったマジックマッシュルーム。センター街のいかがわしいヘッドショップでマジックマッシュルームを買って、お味噌汁にいれて飲み下してから代々木公園のレイブや渋谷のクラブなんかで踊りまくってました。

当時の新庄氏

本当にしょうもないですよね。この時のトリップの経験は、『サーラレーオ』という作品で生きていますし、もしかしたら自分もこの主人公のように零落して、異国の地に逃亡していたかもしれないと思うことがあります。