共通テスト「国語の記述式」が実施された時に起きる、ヤバすぎる事態

SNSは地獄と化す
伊藤 氏貴 プロフィール

そのなかでもできるかぎりの公正性を保つためにさまざまな工夫がなされてきた。結果として、各設問に非常に細かな「条件」が付されることになった。ある設問では「条件」だけで250字にもわたり、これを綿密に読まないと得点できない。

こんなにガチガチに条件を付けて、そもそも記述式問題にする意味があるのかという疑問も生まれるが、一方、採点者も一つひとつの解答につき、この条件が当てはまっているか精査しなければならないのだから大変だ。

 

高校生たちの勝利

そして、高校生たちの発案による今回の再現実験は、どれほど条件を厳しくし、綿密な採点基準を設けようとも、自己採点も、経験のある大人による採点も、統一的結果を得ることがほぼ不可能であることを証明してしまった。

これでは、自己採点で自分の解答を高く見積もってしまった受験生が、より偏差値の高い大学に出願して足を切られてしまう可能性が増える。逆に謙虚な自己採点をしてしまった受験生は、足切りを恐れて、志望校のランクを下げてしまうかもしれない。

それを考えれば、2段階選抜から記述式を除外するように要請する文科省の方針はもっともだ。そしてそこへ持っていったのは、わが身のことながら冷静に事を進めた高校生たちの大きな勝利だと言える。

「共通テスト」への移行にあたっては、「実用文」が導入され、より実践的な論理力を身につけることが目指されているが、少なくとも、今回の試験の枠組を定めた大人たちよりよほど論理的で実践的な知恵を持っている。

これまでも記述式問題の採点の困難さについては指摘されてきたのだが、再現実験という説得力のある方法を思いつくのだから、創造的でもある。国語教育の改革は、こういう学生を育てることをこそ目指すべきだろう。