共通テスト「国語の記述式」が実施された時に起きる、ヤバすぎる事態

SNSは地獄と化す
伊藤 氏貴 プロフィール

そして、ほぼ同じ解答であるにもかかわらず、異なる採点結果だったことが発見されてしまった場合、いったいどうなるか。もはやどうにも収拾がつかなくなるだろう。
私は、今の若者たちのSNS事情からして、これは十二分にありうる危険だと思われる。これが一つめの危険である。

あとからあとから採点結果への疑義がSNS上に出現し、それを付き合わせていくうちに、採点の不備が次々と露わになってしまった場合、国語の試験自体への信頼性が危うくなる。そして国語を判定に使わない大学の方が少ないだろうから、となれば「共通テスト」自体が崩壊しかねない。一つの大学で採点ミスが発覚しただけで大問題になるご時世に、こんな危険を冒してほんとうに大丈夫なのだろうかと心配になる。

 

公平な採点の不可能性

予想されてはいたことだが、記述式問題の採点とはかくも難しいものなのだ。問題作成者を責めるつもりはない。今回のオーダーに無理があるのだ。

実際の各大学の入試では、記述式問題の採点は一問につき一人や二人といったごく少人数で行い、判断の難しいものは議論して決める。採点基準は、実際の受験生の答案によってあとからいくらでも変わってくるものだ。

私も長らく大手予備校で模試作成に携わってきたが、そこでは採点基準はあらかじめ設けず、受験生の解答を見ながら作っていく。そして毎回、採点者を悩ます非常に複雑な基準ができあがる。

なぜならば、一つのポイントだけできていても、全体として見るとまったくわかっていないような解答、あるいは特定の単語を使わずとも、自分なりに考えて書いた「良い」解答というものがあるからだ。彼らの解答の幅は必ず問題作成者の予想を超える。

それを、50万人が受験する試験で公平性を担保しつつあらかじめ採点基準を完全に決めておくということなどは、まずもって不可能だとしか言いようがない。