東芝「東証1部復帰」工作にチラつく経産省の驕りと安倍政権の意向

あれだけの不正があったのに、もう…?
鏑木 邁 プロフィール

安倍官邸の威を借りて

さらに、経産省に横やりを入れられ、シマを荒らされた格好となったにも関わらず、金融庁はなぜ素直に従ったのか。ある全国紙経済部記者は、「今回の経産省の動きの背景には、安倍政権をめぐる財務省と経産省のパワーバランスの変化がある」という。

「東証のトップは日銀総裁と並んで、財務省が次官経験者など大物OBの天下りポストとしてきた歴史があります。

平成の大蔵官僚バッシングの後、民間経験者や東証プロパーが続いた時期もありますが、2013年に東証と大阪証券取引所が合併し日本取引所グループが発足した際、名目上の最高ポストとして『取締役会議長』が新設され、林正和元財務次官が就任して『天下り利権』が復活したのです。

この『財務省のシマ』ともいうべき東証の問題に、なぜ経産省がくちばしを突っ込んできたかといえば、安倍政権の『経産省びいき』があるのは間違いありません。一昔前の財務省優位の時代なら、合理性とかそういう議論以前に、口出しすることさえできなかったわけですから。

韓国への輸出管理厳格化など、経産省は本来外務省が仕切るはずの外交マターにも、安倍官邸の威を借りて介入するようになった。今回の件も根っこは同じで、力のあるうちに財務省の案件にも手を突っ込んでやろうという意図が働いたとみられます」

 

東芝は足下では2019年4~9月期決算で主要部門が全て黒字化するなど、経営は安定化しつつある。しかし、2015年に不正会計が発覚した後も、米国原発事業の損失を隠していた東芝の「隠蔽体質」に対する信頼回復は、十分とは言いがたい。

もし今回の東証1部移行の基準緩和が実現すれば、東芝が適用第1号となる可能性が高い。

不正会計や粉飾決算が明るみに出ても上場廃止とならず、そのうえたった5年で「日本を代表する企業」にカムバックさせるなら、国内だけでなく海外からもモラルを問われることになるだろう。それを容認する安倍政権も批判を免れないのは当然だ。