岩井勇気さん

ハライチ岩井が文章を「面白く書く」ときに一番大事にしていること

リズム、哀愁、視点……

“僕のような一介のお笑い芸人でも、自分の生い立ちを深掘りされるトーク番組に出演することはある。そこでは今までの人生を面白おかしく話さなくてはならない。僕は正直それが苦手だ。

厳密に言うと、話すこと自体が苦手という訳ではない。そういう番組に出演した際、さも自分の人生は山あり谷あり、波乱万丈です、と言わんばかりに誇張させられるのが苦手なのだ。なぜなら、僕の人生を振り返ると、全くもって"波乱万丈ではない"からである。”

(『僕の人生には事件が起きない』「自分の生い立ちを話せない訳」より引用)

取材・文:山本ぽてと、写真:林直幸
取材日10月3日

ラノベみたいなタイトル

――初のエッセイ集『僕の人生には事件が起きない』が、売れていますね。本屋に行っても品切れ続きで、本の入手が困難でした。

最初に刷った数が少ないんじゃないんですか? 新潮社が俺のことを過小評価しているのだと思いますね。

(同席していた編集者):予想以上だったんです!

――すごく面白く拝読しました。原稿のやりとりをしている中で、編集さんにはかなり褒められたのではないですか?

そうですね。褒めないと書かなくなる可能性がありますからね。絶対に褒められますよね。褒めた方がいいとも思いますし。でも新潮社の人が褒めたことを、鵜呑みにしたことは一切ないです。「すごくいいです」と言われても、「書かせようとしているな」と思いました。褒める仕事は大変ですよね。あれだけ褒めて、この部数かよとも思いましたけど。

(同席していた編集者):予想以上だったんです!

 

――タイトルが『僕の人生には事件が起きない』ですよね。書いていた当時は、岩井さんのテレビ露出が増えていた時期でもありますが、そんな中でなぜ「事件が起きない」ことを題材に選んだのでしょうか?

なんでだっけ……。タイトルは俺がつけていません。

「腐り芸人」と言われてゴッドタンに出させてもらっていて、それを取っ掛かりにして僕を見てくれた人もいると思います。実際にタイトルの案には、「腐り」とか「世の中に絶望している」とかも挙げられていました。

普通はそういうタイトルにしがちだし、わかりやすいと思う。でも内容とまったく違いますし、今「腐り」がフューチャーされるから、それをやるってことをあまりしたくない。

――なぜしたくないんですか?

「そういう人」になってしまうからです。人が言っている分にはいいけど、自分で言い出すとちょっと違う。なんて例えたらいいかな……小林幸子さんをネット上で「ラスボス」と言うのはいいけど、テレビで言い出すと違うんだよなということがある。「腐り」って、他の人が揶揄して言っているならいいけれど、当の本人から言われると、ちょっと冷めますよね。

あと、活字はライトノベルくらいしか読んだことが無かったので、ラノベみたいなタイトルでいいかなと思いました。