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東北電力・女川原発、安全審査「合格」で早期再稼働は可能なのか

新たな課題も見えてきた
町田 徹 プロフィール

それから1年近くたって、今度は、大手通信会社のトップから「社員のお母さんが女川原発に避難して命を救われた」という話を聞かされた。アメリカの同時多発テロ以来、原発の敷地内への一般人の立ち入りは厳しく制限されている。そんな原発がいったい、なぜ、周辺住民の避難を受け入れることができたのか、筆者の疑問と興味は膨らむばかりだった。

震災翌年の春、最初の女川原発の現地取材とその下調べの時に、筆者は驚くべき事実を知った。それは、東電・福島第一原発と女川の1号機はいずれも、米ゼネラル・エレクトリック社製の「マークⅠ」という原子炉だったが、設置の場所がまったく違ったということである。

東電は導入コストを下げるため、できるだけ改良を加えず基本スペックのまま導入するために、わざわざ土地を大きく掘り下げて海抜6mのところに設置して津波のリスクを増大させてしまった。

一方、東北電力は平安時代からの古文書や地元の伝承を調べ上げ、三陸地方を巨大津波が繰り返し襲ったという歴史的な事実を重視して、あえて14mの高台に敷地を求めて、あの巨大津波の被害を最小限に抑えることに成功したというのである。

そこには、両社の企業カルチャーや安全に対する姿勢の違いが浮き彫りになっていた。

 

最後まで値上げをしなかった東北電力

その後、原子炉を増設する時の対応も、この2社は対照的だった。東北電力が常に新たな知見を追い求め、そのたびに壁面を強化するなど安全対策を重ねたのに対し、東電は新たな知見が通説になっていないからと巨大津波対策を先送りしていたのだ。これらの問題は、後に刑事裁判の争点にもなったので、記憶している読者も多いだろう。

こういう対応の違いが両者の間にあったから、女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発で、高さが13メートルの巨大津波が押し寄せたにもかかわらず、非常用電源が津波に飲み込まれることなく、迅速に原子炉を冷却でき、福島第1のような事故を起さなかった。