2010年に出た『下着選びは誰のため』という本の中で、立花律子は、「男性が考える『勝負下着』と女性が考えるそれの内容には差が生じている」と指摘している。「前者が異性の視線を意識したものだったとすると、後者はあくまでも自分に気合いを入れる、『アゲる』ためのもの。『勝負服』という表現があるが、そちらに近い」という。

つまり、女性たちはもはや自分のために下着を選ぶようになったということだ。たとえ、セクシーな下着を身に付けていようとも、それは男性を誘惑するためでなく、自分の気分をアゲるためだったのだ。セックスアピールよりもナルシシズムの勝ちである。わくわくする気持ち。高揚感。素敵な下着は、私自身を元気づけ、勇気づける力を与えてくれる。デートよりも大事なイベントや仕事を成功させるための勝負下着。それはまさにエンパワーメントとしての下着である。10年前ですでにこうだったのだ。

宮沢りえの『サンタフェ』が変えた
女性の身体に対する意識

セクシーな下着が売れなくなり、勝負下着の意味が変化した背景には、“視られる身体”から“魅せる身体”へという身体意識の変化もある。いつから女性たちは男性に視られるだけではない私自身の身体を手に入れたいと思い始めたのだろうか。

もちろん、今でも男性週刊誌やグラビア雑誌には、バストやヒップを強調した扇情的なヌードも存在している。しかし一方で、女性が自らの美しい身体を誇示するかのようなヌードも女性誌などに掲載されるようになって久しい。

売れなくなったアイドルや女優が、起死回生手段として男性週刊誌でヌードになる。そんなネガティブなヌードのイメージを打ち破ったのが、今や女優として高い評価を得ている宮沢りえである。18歳の宮沢りえのヌード写真集『サンタフェ』の広告が一般紙の一面を飾ったのは、1991年のことだった。人気アイドルの美しくも健康的なヌード。明るいサンタフェの日差しの中で撮られた笑顔の裸体は、ヌードの意味をあっさりと変容させた。