「心療内科に連れて行け」

Yさんからの相談を受けたとき、父親はさらに常軌を逸した態度に出ていた。
「努力している姿が感じられないし、公式戦にも出られなかったから辞めろ」と夏には退部を迫り、「成績が良くないから、インターナショナルスクールに移してグローバル社会に通用する自立した人間にする」とまで言いだした。そのうえ「人の話を聞けないから病気かもしれない。心療内科に連れて行け」と母親に命じるというのだ。

中学1年生で入部し、1学期の間に結果を残せなかったら退部を迫る、学校も変われ、お前は病気だ。1学期のその数カ月で、すべてをダメ出しされて前に進めるだろうか Photo by iStock

話を聞かないように見えるのは、思春期の中学1年生ならよくあることだ。そう女性が抗うと「おまえは息子の将来を真剣に考えていない」と怒鳴られる。
小学生の妹からは「お兄ちゃんがサッカーなんかやらなければ良かったんだ。こんな生活は嫌だ」と泣かれてしまう。

「どうしたらいいのかわからない。サッカーも、勉強もイマイチな息子に対し、主人がしていることは正しいのでしょうか?」

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Yさんなりに子育てを学んでいるので「子どもの意思を尊重しなくてはいけない」と言うものの、「サッカーも勉強もできない息子だから父親の態度も仕方ない」という感覚があるようだった。

さらに、息子による母親であるYさんに対する家庭内暴力が始まっていた。父親に抗えないストレスが、弱い存在の自分に向かっている。Yさんはそう説明したし、一理あると思う。だが、長男は自分のことを「サッカーも勉強もイマイチ」と思っている母親の気持ちを見透かしているように思えた。

お母さんに見下されていると気づいているよね。悲しい気持ちが暴力になるんじゃないかな。
「見下してはいないんだけど……」
うん。そうか。だったら、「今のままでいいんだよ」って言ってあげよう。
「今のまま、ですか。うーん。もう少し頑張ってもらわないと……」