芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか

ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)
原田 隆之 プロフィール

大麻は害がないなどという根拠のない噂が広がっているが、20種類の薬物のなかで、8番目に害が大きいし、使用頻度や期間などによっては一層害が大きくなる。

ナットは、論文のなかで、「スコアが小さいからといって、それは害が小さいという意味ではない。これらのドラッグは、状況によってはすべて害のあるものだ」と警告している。

害の種類を細かく分けてみると、アルコールは、外傷、犯罪、家族への害、経済的損失が大きく抜きんでている。一方、致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコである。たとえば、わが国のタバコ関連死は、年間20万人と見積もられている(6)

覚せい剤は、精神的な害が大きく、幻覚妄想状態などを引き起こしやすく、これは覚せい剤精神病と呼ばれる。また、大麻はどの種類の害も平均的に大きい(死亡、精神異常、犯罪、家族、経済的損失など)。

 

有効な薬物依存対策

このように、依存性のある薬物は、合法、違法問わず、使用者本人と社会に大きな害をもたらすものである。アルコールとタバコは合法であるが、これは歴史上早くから使用されていた薬物であり、近代社会になる前にすでに広く蔓延していたからにすぎない。合法か違法かの線引きに、科学的で合理的な根拠があるわけではない。

したがって、これ以上他の薬物を合法化することは、賢明な選択ではないし、本人や社会への害を減らすためには、現在合法であるものも含めて、できる限り使用を減らしていくべきである。

ナットは、結論として「公衆衛生の問題として対処すること」の重要性を強調している。つまり、繰り返しになるが、使用者への処罰や社会的排除では解決とはならず、予防、治療、教育などのヒューマンサービスこそが有効な対処だということだ。

有名人が逮捕されるたびに、その個人をいくらバッシングしても、懲らしめても、何の問題の解決にならないのは明らかである。われわれ社会全体の問題として、科学的エビデンスに基づいた医療や公衆衛生の力を総動員し、効果のある対策を取る必要がある。

(6)Nutt D. et al. (2010) Lancet, 376, 1558-1565.